感覚


酒は怖い。体を蝕む。脳を壊す。百害あって一利なしだ。やめておくべき。という声にも頷きつつ、どうせ年老いる、どうせいつか呑めなくなるのだ、ならいまのうちに、呑めるうちに呑んでおけ、今、それを呑まなかったら、その一杯はもう二度とお前の目の前にあらわれないかもしれないのだぞ、という声にも深く共感する。でも一つ思うのは、仮説として、体というのは、これは酒を味わうために存在するのだとも言えて、というか、どうして体に刺激を与えると、心が満足するのか、体そのものが、心が形になったもの、というわけではない。たとえばセックスで、相手が喜んでいるのを見ることが自分の快感、という感覚はあるかもしれないが、あれは心身がまさに無関係であることの快感に近いのか。他人の体の快感が、自分に感じられるような錯覚。しかし、セックスの快楽って、ほんとうに幻想というか、孤独な心の妄想だけで出来ているように思われるな。現実は、身体同士がぶつかり合っているだけなのに。酒だと、身体が分子レベルで他物質と結びつく部分があるように思うけれども。