玄関のドアを開けて歩き出すといきなり暑くて、歩きながら意識が少し薄くなっている気がする。31分発の京浜東北線。つり革に掴まって、音楽も聴かず、本も開かないで、窓の外を見ながらぼーっとする。なぜか、妙に気持ちがいい。ふわふわとした気分である。電車の中にいるのが、面白い。周囲の音も面白いし、周りの人々の様子も、なぜかすべてが新鮮に感じられる。そのままいつまでもぼんやりする。窓の外は夏で、白い光が溢れかえっている。今この得体の知れぬ幸福感が、氷が溶けるようにゆっくりとなくなっていくのをただ黙って見ているだけだ。