末夢


まあ、じつにグータラな、ずーっと寝転んでるだけの一日で、今年も終了。あまり終了とか、そういう感覚はない。そういう感慨的なものを感じ取る能力も減衰してきた感じ。それにしても、ただ寝転んで食って飲んでしているだけでは、まったく何も面白くないし楽しくもない。食べても飲んでも張り合いがない。やはり身体を動かすなり頭を使うなりして、はじめて不足したと感じる栄養を、取り込まないといけませんね。


晦日の夜に眠って見る夢は初夢ではなくて、翌日がそうなのだろうが、ともかく夢をみた。生牡蠣と、あと何かもう一つ変わった種類の生の貝を食べる夢。舌に痛いほどミネラルの効いた白ワインを口内に流し込む。ああ、またしばらくはこういう感じかと思う。でもこれで美味しいならそれでいいじゃないのとも思う。その貝を、また口に運ぶ。あらためて味わう。なんだろうこれは。はじめての食感。生牡蠣よりもこころもちふくよかで、弾力のある身で、やわらかくて抵抗感があって、とても滋味深い。ぜんぜん知らなかった、こんな貝があるのか、と驚く。これはしばらくハマりそうだと思って、よくよく説明書きを見ると、ひどく崩した書体で、厚岸 仙鳳趾、と書いてある。え?じゃあこれも牡蠣ですか?そうなの?と思うが、店員も誰も周囲にいない。広い店だ。ここ、ファミレスだな。しかも昔からある店だ。老舗のファミレス。もう三十年以上前からある。僕が高校生のときからやってる店だ。店内はレトロ・アメリカンな内装が風化したような古めかしさをたたえてはいるが清掃も行き届いていて清潔で雰囲気は悪くない。というかこの店、僕の中学生時代の同級生が店長なのだ。そうそう、そうだった。まるで決まり切った動きのように、無駄のないきびきびとした所作で働いているあの人がそうだ。そのとき入口付近がざわつく。団体客が来店したようだ。大勢の声、若い人ばかり。20人以上いる。店員が大慌てでテーブルを用意している。大変なことだな。よく見たら、団体を引き連れてきたのは、チュートリアルの徳井ではないか。なんだ、あいつか。あいつ、ずいぶん偉くなったな。あれだけたくさんの弟子や取り巻きがいるのか。一瞬、目が合った。向こうもこちらに気づいたようだ。なんとなく気まずそうな表情で、徳井の方が目を逸らした。まあ、昔とはお互いにずいぶん変わってしまったわけだし、気持ちはわかる。店の真ん中の大きなテーブルに集団が座る。窓から日差しが斜めに差し込んできていて、彼らの囲む空間の半分を照らしている。まだ午後を少し過ぎた頃だ、まだ今日という日は、はじまったばかりだと思う。