重さ

金子光晴「どくろ杯」はゆっくりと読み進む。(ゆっくりでないと進まない。)主人公の私が妻にたえず感じ続けている恋愛感情というか太く濃い性欲の密度につつまれている感じ。大正から昭和へとか時代とか世相とかの表面を突き抜けて、欲望の物理的な重さというか、のしかかられた女性の身体そのものの重さ、肉の感触、べつにそういうことは一行も書かれてないのに、そういう目の前のリアルさのようなもの、わだかまって滞留する感触そのもののように感じながら読んでいる。


じゃあ悪いけどこの作業の続きしておいて、と言うと、無言のままはーっとため息をつく仕草をして上を向いて嫌な仕事だーというジェスチャーをする会社の子。隣でずーっとお菓子とかを食べてるから、近寄ると甘ったるい、まるで子供みたいな匂いがする。