鰹の刺身、解凍モノだし、まだ高いし、まったくお買い得ではないし買い時でもない。むしろ、なぜ買うのか、まだ時期尚早、少なくとも今は手を出すべきじゃないのだけれども、つい買う。新玉ねぎ一個分を薄く切ったやつと、ネギとか茗荷とかおろした生姜と共に食べる。これ、このたべもの、この世でいちばん好きだ。いつもはあまり好まないはずの、少しふくよかな感じの冷酒との相性が良いように感じられる。野菜の苦味とえぐみ、鰹の刺身の弾力、ホタルイカの身のなめらかさと濃厚さなど、春メニューを思い浮かべる。これら、春を予感させるというより冬の名残を惜しむような味わいに感じるのは僕だけか。