ベトナム

昨日は死ぬほど寒い日で、燗酒がのみたいのみたいとうわ言のように呟きながら思いついた店を目指したが、一軒目はお席いっぱいで、次の候補店もやはり空席無しで続けて断られる展開で、まあこういう日もありますよと気を取り直して仕方なく近くのベトナム料理店に入る。でも結果的にはその店でなかなか良かった。ああ自分、意外とパクチー大丈夫なのだ、というかこの独特な味わいのなかに含まれてくるアクセントしてのパクチー香というのはとても有効なのだとはじめて思う。メニューも如何にもな多種多様さでとても一度の来店で全容を知ることはできない。店はおそらくベトナム人スタッフだけで回されていて、注文はもちろん日本語で可能だし相手も日本語で対応してくれるが、なにしろスタッフ同士がのべつまくなし延々と現地の言葉でお喋りしていて、客の注文だろうが皿を持ってくるときだろうが下げにくるときだろうが、相手とやり取りするときだけはかろうじて日本語になるけど、それが終わるとまるでスイッチが自動的に元に戻るかの如く、一旦停止中だった現地語のお喋りがまったく同じテンションで元通りに再開されて継続する、ほとんど彼らの果てしないお喋りがこの場において第一の優先度で、その合間合間に料理が作られて配膳されて我々客たちに提供される感じで、これはこれでものすごく現地の空気っぽいというか、いや現地の空気など知らないのだが少なくとも日本のレストランではけして流れないような、あまり経験したことのない時間の質感だなと思って、その全く意味のわからない言葉の応酬をバックミュージックのように聴きながら食事を続けた。なぜかそれがある意味快適で、この店はまた来る事になりそう。