ビジネス書

読んだ感想などを提出する必要があるので、指定されたいわゆるビジネス書のようなものを読んだのだが、まあある程度わかってはいたけど、実際読むとほんとうに驚くほど起伏のないのっぺりとした記述の続くものだという印象。むしろ一字一句を追う必要性は感じられなくて、目次をざっくりおさえて趣旨を理解して補足として本文を参照して補う的な、まさに効率的な読み方をせよと本自体が言ってるような感じになっていて、なるほどこれならたしかに週に十冊とかそういう世界も可能かもしれないとは思った。

で、たまたまなんとなくu-nextで「プライベート・ライアン」の冒頭の戦闘シーン以降の数十分を観ていたのだが、戦争映画っていうのも結局はビジネス書が採用してるモデルを共有してるものだなと思った。リーダーシップで組織を引っ張る中隊長がいて、部下と上司を共にまとめるマネジメントをつかさどる軍曹がいて、部下はそれぞれ思い思いに自分の意見を口にする。それは皆正論だが、それをボヤいてもはじまらないのは誰もがよくわかってる。でもボヤかずにはいられないから、つい口をついてボヤいてしまう。その手の疑似家族的、組織維持的な物語が敷かれていて、各々の役割分担を責任をもってこなすことの美徳が謳われている。(セリーヌ的な、覚醒的・自覚的にその場から逃避を試みる人物はその世界においてはありえない。)

中隊長殿、あなたはボヤかないのですか?との質問にトム・ハンクスは応える。ボヤきは階級順に流れる、下から上へだ。俺は部下にはボヤかない、と。もし俺が少佐だったら中隊長殿は俺に何とボヤきますか?とさらに質問されて、トム・ハンクスはあえてキレイごとみたいなセリフを言い、その場を半分冗談みたいにして終わらせる。それを黙ってじっと(ちょっと半笑いしながら)聞いているのが、軍曹のトム・サイズモアである。今日読んだビジネス書は主に軍曹の役割について書いてあるものだった。

それにしても、アメリカでもこの手の組織物語が今でも有効なのだろうか。まあこの映画は二十年前だけど、つまり今のアメリカの会社組織においてもまだマネジメントとかリーダーシップとかは有効なものなのだろうか。GAFAとか言われるけどどんな組織体制なのだろうね。まさか鬼軍曹とか熱い心の中隊長とかは、きっと居ないのだろうな。