カップルズ

ものすごく久しぶりに、エドワード・ヤンカップルズ」を観る。そうそう、こういう話だったと一々細かく思い出した。いくつもの出来事が他の出来事と連鎖して、あれよあれよという間にすべてが雪崩落ちるかのように展開する。レッドフィッシュを追うヤクザの二人、軽トラックを運転するルンルンとレッドフィッシュ、イギリス人の男と彼を追ってきたマルト、イギリス人と仲良さそうな彼女、その彼女をカウンターからじっと見つめるホンコン、ルンルンの不安そうなまなざし。ホンコンは翌朝になって彼女に仲間への奉仕を要求し、リトル・ブッダはイラついて部屋の中を歩き回り、あの女キスしやがったと言って怒る。ルンルンはやはり不安げな表情だ。物語としては、不良少年で構成された組織があって、その組織が崩壊していくまでが描かれている。その中心にあるのは組織のリーダー的存在レッドフィッシュの挫折の物語だ。レッドフィッシュのショックは「父が崩壊した」ことと「思惑が外れた」ことによるが、ただし他の仲間たちはレッドフィッシュの思いを共有するわけではない。ホンコンは巧みに女を誘惑するが、最終的には自らの自我が崩壊してしまう。インチキ占い師の役が板に付いてるリトル・ブッダは軽トラックによる当て逃げでチームが機能しない組織では意味が無いから、早速あらたな仲間を集めようとするだろう。チームでいちばん下っ端でありながら英語~台湾語通訳と運転手役を担うルンルンは、結果的にレッドフィッシュを陥れる原因を作ってしまったわけだが、たぶんこの物語におけるすべての運勢の良い目は、ルンルンの方に向いていた。色々危ない局面もあったけど、どうにか上手く切り抜けた。努力とか機転を利かせたとかでもなく、人間の意志とか意図ではどうしようもない、落下して弾んでどこかへ行こうとするボールの動きをただ見守るしかないような、この映画はどこまでも受け身の楽しさに満ちている。組織トップの思惑通りに事は運ばず、女とキスをすると不吉さを呼び込むから絶対に避けるという仲間内のジンクスも破られた後、新たなカップルが誕生して、最後は夜の街中の喧騒だけが聴こえている。

午後から図書館へ。返却する本はこれだけだったか、いや、もう一冊借りてる気がする。しかし家の中に見つからない。おかしいな気のせいだろうかと思って、とりあえずある冊数だけ図書館受付に返して、その場で自分の貸し出し状況を確認したら、やはりもう一冊借りてるとのこと、仕方ない、家でもう一度探してみようとなって、帰る途中で食材を買い物していたら、財布をレジ脇に忘れてあやうく紛失盗難届けになるところだったが、すぐ気付いて現場へ戻り、サービスカウンターに届けられた直後に取り戻すことができた。あー良かった、というか自分こういう事が多すぎる、バカなのだろうか、というか特に今日は、色々ヤバ過ぎる。モノが消えすぎる、不吉だ、危険だから早く帰ったほうがいい、と思って、猛暑のなか帰路を急ぐ。帰宅後あらためて探したら、図書館で借りたもう一冊が出てきた。くりかえすけど、なんだか実に色々とダメな日だ。