ヘテロトピア

東京都美術館 ギャラリーCで都美セレクション グループ展 2019「ヘテロトピア」を観た。松浦寿夫「misique de table -テレマン礼賛」と題されたシリーズがとても良かった。何の変哲もない、白い紙コップと紙皿がぐしゃっと潰れたり歪んだり、変形・着色させられて、ヘナチョコなゴミみたいな様子でありながらもじつに面白みのある立体の作品として壁に貼り付けられて展示されているのだが、その形態、色彩の面白さやうつくしさもさることながら、その魅力の内実としては、それが皿とコップであるという具体性が消えてないことが大きいのだと思った。つまりそれは食卓、食事というもののイメージを常に想起させてくれて、形態、色彩のうつくしさが単独で抽象化することもなく、人間的な匂いみたいなものをかすかにまとっている。皿やコップをモチーフにした静物画的、というわけでもない、モチーフではなくて、そのものなのだ。そもそも考えてみれば、表面に色彩が付着した皿やコップを見たら、人はその色彩を容易に食物的なものに思う。潰れて変形してはいるがコップの口から何かがのぞいていれば、それは本来飲食されるべきものだったと感じる。あたりまえといえば実にあたりまえだが、それでもこうして作品として観るのはとても楽しい。