浜離宮

新橋に12:00集合の約束、なのに15分以上前に6人全員集まる。連休初日なのに…みんな暇か。僕はわりと好きで年に二回くらいは来る浜離宮公園。曇り空を背景に、書割みたいに立体感をうしなった高層ビル群に取り囲まれたような日本庭園風の敷地、もしかして客の七割くらいが外国人かもしれない。途中で僕だけ皆から離れて勝手に歩く。イヤホンで耳を塞いでジョニ・ミッチェルを再生した。ライブ盤「Shadows And Light」はギターと歌がジョニ・ミッチェルで、もう一人のギターがパット・メセニー、ベースはジャコ・パストリアスである。どの曲も主旋律と歌は完全にジョニ・ミッチェルが采配していて、その上で二人の名うてのジャズミュージシャン達のギターとベースが縦横無尽に飛び跳ねている感じだ。このバンドにおけるジャコ・パストリアスはほんとうに凄い。ジャコ・パストリアスの芸暦の中でももっともすごいんじゃないかと個人的には思ってしまう。しかしいちばん凄いのはジョニ・ミッチェル自身か。こんな騒々しく好き勝手に弾きまくってる弦楽器奏者二人の間で、よくもまあいつも通りに平然と歌って演奏できるものだと驚く。「Shadows And Light」は映像もあるけれども、演奏するメンバーを見ていると、相互理解っていったい何だろうとつくづく不思議に思う。ジョニは前を見て歌っていて、ジャコは楽しそうに自分のフレージングを続けている。彼らがお互いに何を聴いているのか、よくわからない。自分勝手に自分の仕事だけしているようにも見える。しかし、けしてそうではない。目まぐるしいスピードで交換/交歓が行われている。それは結果としてできあがった音を聴けばわかる。その不思議さが、何度見ても不思議なのだ。

海沿いまで歩いて、ベンチに座って、持参した木炭紙を広げて、木炭でトーンを付けていく。ずいぶん久しぶりの感覚。景色(海面の様子)を描写するというより、単にトーンコントロールを試しているだけといった感じ、ざっと炭を乗せて、ガーゼで叩くか抑える。あるいは指で刷りこむ、その上から再度炭を乗せる。グレーの諧調をなるべく多めにしてトーンの表情を変える。肌理の細かい黒の粉末がふわっと飛び散って紙面に付着するくらいの濃度にうつくしさがあり、消しゴムをあてて描かれた白の際立ちとするどくぶつかり合う。そんな感じで一時間ばかり描いていたけど、結局恐る恐るの怯えたような感触から抜け出せてないまま終わる。もっとずぶずぶに失敗しないと面白い段階にはいけない。まさに手なぐさみみたいな時間だったけど、久々だったし、まあ面白かった。

やがて雨がぱらつきはじめた公園を出て、皆で銀座まで移動、三時半頃から夜まで延々飲み会になる。元々は僕に原因があって、僕が悪かったのかもしれないが、いつの間にかみんな、ほんとうにたくさんお酒飲むようになりましたね…と思う。それに、よく食べるしなあ…と思う。まあけっこうなことだ。会としては一旦解散後、うんざりするほどしょっちゅう会うEさんと二人でいつもの店に行ってから本終了。スタッフの子がずいぶん気さくな態度に変貌していて、そうかEさん、君すごいな短期間の間に完全な常連になってしまったんだな、そういう努力するんだなと感心した。