健康

健康診断というのは、診断の時間よりも待ってる時間の方が長いものなので、その間は読書になるわけで、本日は橋本治「美男へのレッスン」を読んでいた。この本、埼玉の実家にあるんだけど、久々に読みたくなって電子で買ってしまった。しかし橋本治は膨大な量の著作があるけど、僕はなんかこの年齢になってやっとこの作家の言おうとしていることを、本当に自分のこととして、けっこう切実な何かとして受け入れることができるようになったと最近ひしひし感じる。今はほんとうに何を読んでも一々刺さる。逆に二十代のとき「美男へのレッスン」を読んでも完全に無駄だったような気がする。きっと何もわからなかったに違いないと思う。だってここに書かれているのは美男とは何かを認識する必要がある人についてで、当時の僕はそんなことを知る必要がいっさい無かったのだから、つまり当時の僕は社会性というものをまったく意識してないし必要としてなかったし、その枠内における自分の場所とか立場とか、もしあるのだとすれば役割とか責任とか、そういういっさいを知る気がなかったし、したがって他者をおもんばかる意味も必然性もまるで考える気のない愚者そのものだったのだから。まあそれはそれで幸福で言うこと無いけっこうな話なのだけれども、でも、それにしてもやはり僕は、あまりにも成長が遅すぎた。呑気過ぎた。ここまで来て、ここまで年齢を重ねてから、ようやくわかってきた気がする。ただ誤解を避けるために付け加えれば、精神分析とかもそうだろうけど、それは自分が社会的にどうだからこんな責任感をもって役割を果たしていかなければ、という意味では全然なくて、そういう認識が世界を回してるんだという仕組みを知るということなのだが。しかし…いや、そんなこともないかもしれない、ほんとうにわかってんのかな…とも思う。なんか視点が変わってないというか、緊張感ないというか、どうもヘラヘラしてるんだよね。危機感ていうか覚悟感ゼロで、そんなことでいいのだろうか。いいのだろうか?って現にここにこうして書いちゃうところが、なんか軽いんですよねあなたは。

健康診断の結果はまあ良好だった。肺活量が向上したのを褒められて浮かれた子供のように喜んでる。