五十

ビールの小瓶を傾けて薄張りの小ぶりなグラスに注ぐとき、瓶を水平にしてグラスの淵にぎりぎり付かない程度の位置に止めて、注がれる液体がグラスのなかで泡へと変わる様子を見ながら、均一のペースでゆっくり注ごうとするのだが、小瓶程度の重さを片手で支えていられず、瓶口が細かく震えてしまうのを苦々しく思って、その原因が二の腕の内側に薄っすらと生じている軽い神経的な痛みにあることに気付く。二、三年前に左肩が"五十肩"になって、半年ばかり痛みがあって、でもたいていの"五十肩"がそうであるようにいつの間にか治ってしまい、最近はそんな出来事があったこともすっかり忘れていた、そのことを思い出した。