パラサイト 半地下の家族

TOHOシネマズ上野でポン・ジュノ「パラサイト 半地下の家族」を観た。本作は監督のポン・ジュノ自身が、ネタバレするなと事あるたびに口にしているらしい。しかし以下、思いきりネタバレしているのでご注意下さい。

イデア豊富で、面白い仕掛けがたくさん詰まっている。中盤以降、地下室への入り口の前で、いきなり怪しさ倍増で戻ってきた元家政婦が、異様にも身体を突っ張り棒のように真横にして棚を押しやり隠し扉を開けようと踏ん張るあたりから、ポン・ジュノらしいホラー風味なテイストが強まって、あとはあれよあれよという間もなく怒涛の展開を見せる。

スマホの送信ボタンがミサイルの発射ボタン扱いになって(電波が届く届かないとかの生活感から来る細かさ笑)、キム・ジョンウンのモノマネが続いたかと思うと、地下の攻防、桃による攻撃、八分間リミットで緊迫のラーメン調理、生死が判然としなくなり、隠し扉の手回しハンドルが隠されて、もう一つの経路のようにモールス信号の仕組みが示される。庭に設置される長男のテント、それを見ながら突如として交接をはじめる社長夫婦、机下に隠れる半地下家族、かろうじて脱出、豪雨、どこまでも降りていけそうな下り階段のおそろしく魅力的な景色を駆け下りていくにしたがい、雨が激しさを増し、やがて水害となり、半地下の住居内において水はじょじょに水位を上げ、それは貧困区域の災害そのもの、下水と上水が混ざり、水は下から噴き上げ、ほとんど上下が逆になったかのようだ。行き場を失い、避難所で息子は父親から啓示的な言葉を聞き、導きの石をかかえて何事かを思う。

冒頭のピザ屋の娘とか、留学してしまう友人とか、もう一度くらい何かあるかな?と思っていたけど、そうでもなかった。金持ち一家の長女と長男のあまり説明されない妙な不穏さ(わかってるのだか、わかってないのだか)は面白かった。「体臭」の問題とか、最後の刃物を振り回して血みどろな展開とか、正直いささか気の滅入る、ため息一息と共に全て忘れたくなるところもあるが、さいごに誰が死んで誰が死ななかったのか、やられた直後の(全員死んだと思ったほどの)凄惨さとあまり関係なくて、ラストまで観ないとわからないあたりも面白くて(だったら全員が生きててもおかしくないじゃん笑と思ったが…石のご加護か)、将来はもはや真っ当な方法で「地下」を訪ねなければ父と再会できない、そんな複雑な罠に自ら掛かった半地下の家族ということで、最後のオチも見事に決まった、、という感じ、だろうか。しかし、あのモールス信号は、さすがに不自然だしすぐバレるだろう(笑)とは思った。