裸眼

夜の寒さ、そして雨が、頭にぽつぽつと当たる。これはやばい、でも、このまま雪になるかと言えば、どうだろうか、微妙ではないだろうか。寒いとはいえ、この程度なら、おそらく雨のままで終わるのでは。そうでないとすれば、真夜中から明け方にかけてか。週初めなので、嫌々ながらジムに向かう。週の始めにサボって後に回すとますます嫌になるので、今日は無理してでも行く。着替えて、プールサイドに立ち、ゴーグルを目にあてがいベルトを頭に回した瞬間、ゴムがばちんと切れてしまった。あー、と思った。ゴーグル、使用不可。それなら裸眼で泳ぐのか、泳げるものだろうか、というか、裸眼で泳いでもいいのか?別にダメということはないか。試しに、ゴーグル無しで一往復だけ試してみることにする。水に入り、壁を蹴って泳ぎ始めた。そうしたら、予想以上だった。五メートルも進まないうちに、無謀な試みだと悟る。これ、絶対目が死ぬやつだ。目を開けてられない。でも目を閉じるとまっすぐ泳げない。途中から無理に頭を上げて、海水浴みたいな泳ぎ方で戻ってきた。今日はこれでリタイア、おしまい。不可抗力だから仕方がないのだ。しかし50メートルだけ泳いで帰るのは、さすがにはじめてかもしれない。すでに充血のはじまった両目に大量の目薬を挿した。目薬を挿すのは苦手だ、薬品の一滴からつい逃げたくなる。それ以前に、滴口を目に近づける時点でおそろしくて、とんでもなく的外れな場所に一滴を落とすことも多い。しかし今回ばかりは目薬がありがたい。左右二つ少し間隔をあけて隣り合った球体に対して、喉の渇きが潤うような快感を感じる。