ゾンビ

Prime Videoで、ジョージ・A・ロメロ「ゾンビ」(1978年)を観る。中学生のとき(1985年頃?)にビデオで観たのが最初で、それ以来だから…とにかく何十年ぶりの再見。なぜ観ようと思ったのか、自分にもよくわからないのだが、たぶんショッピング・モールの一角に逃げ込んでつかの間の安穏を享楽する主人公たちの姿を、久しぶりに見たいと思ったからだ。無人の店舗に売られている服飾品や宝飾品を適当に身に着けて、化粧をして、棚にずらりと並んでいるボトルの酒を飲み、無人のレストランで食事をしたり、屋上で壁打ちテニスをしたり、そんなことで時間をつぶしている彼らの姿。本作をはじめて観たときも、何しろそんなシーンばかりが印象に残ったものだ。ゾンビに襲われる場面の強い緊張感や嫌悪感と真逆のコントラストを示すぶん、余計にインパクトがあった。自暴自棄的になっているわけでもなく、けっこう冷静に見える主人公たちの様子、すごく停滞していて、陰鬱で、退屈をもてあましていて、危機感や不安ま勿論あるけどさほどでもない、ぬるま湯に漬かってるような、見て見ぬふりで誤魔化しきってしまいたいような、皆で口裏あわせて、黙って事の次第をなしくずしに受け入れてしまおうとするかのような感じがある。食料も武器もそれ以外の様々な物資も、ここには豊富にあるのだから、取り急ぎ解消すべき不安もないし喫緊の課題もない。そういう日常を送っている。緊急事態であることはたしかだが、だからと言ってさしあたりやるべきことがないという状況が、この作品の半分以上の時間を占めている、その感触には不思議な現実感があるよな…と、今回の再見時もやはり思った。