イ・チャンドン作品

Amazon Prime Videoでイ・チャンドンペパーミント・キャンディー」(1999年)を観る。冒頭で「これはなんだかすごく面白いかも!」と期待を膨らませる。まあ結局最後まで見終えて「まあこんなもんか」という感じでもあったが。映画の構成として、逆時系列というか、現在、三日前、数年前、さらに数年前・・と主人公の人生を逆にたどっていく方式。ある謎があらわれて、次で解決されて、さらにまた別の謎があらわれて、そして最後には…という手法自体はとくに新しい方法でもないと思うし、その方式で人を驚かせようという意図があるわけでもないように思われる。主人公がああなった理由とか、女の謎とか、秘められた過去とか、そういうこととは別の、撮影された映画としてヘンな面白さを持った作品、という印象だ。とくに最初のエピソード、主人公はふらりと川沿いにあらわれ、二十年ぶりの旧友たちと再会し、その場で野外飲み会に参加するのだが、このときの誰も彼もが何を考えているのかさぱりわからない雰囲気はちょっと異様で、本気なのか冗談なのかもよくわからないような、呆気にとられるような感じは、映画全体を最後まで見終えた後も依然として消えないままだ。最後はなんとなく「人生…ほろ苦くもいい話」的なところに落着してしまってる感もあるが、そんなことないと思う。社長時代、刑事時代、兵隊時代それぞれ噛み合ってるようで噛み合ってないし、何かが何かの説明になってるわけでもないし、女に対する態度に一貫性があるわけでもない。その整合不足な感じがかえって面白味として生きた感じの印象だ。屋外で撮影されたシーンは晴れの日も雨の日もそれぞれ光がたいへんうつくしくて、自動車のシーンや暴力や追跡のシーンもいい感じ。

続いてAmazon Prime Videoでイ・チャンドン「オアシス」(2002年)を観る。交通事故の過失致死で刑期を終えて出所した前科者と事故で亡くなった被害者の娘で脳性麻痺の女性とが恋愛するという、まあ何というか…クセが凄すぎる設定で、障害者、家族、差別などのいろんな問題を織り交ぜつつ様々な障壁にぶつかりながらもガンバる二人の関係を中心に…という作品。主人公の女性はほんとうに脳性麻痺の病人に見紛うほどの演技がすごい。役者とスタッフ共にプロフェッショナルな作り手による、あらゆる意味で完成度高い作品という感じだった。言い方が悪いが、こういう題材に挑戦した結果見事な成績をおさめたという感じでもある。