ヴァージニア・ウルフ「病気になるということ」片山亜紀訳/新訳・解説公開 を読む
セクション1
https://www.hayakawabooks.com/n/nc4c01534f6a6
セクション2
https://www.hayakawabooks.com/n/n775c24379791
セクション3
https://www.hayakawabooks.com/n/n42f048683ddf
訳者解説
https://www.hayakawabooks.com/n/nc6168cc45e52
とくにセクション2がとても素晴らしい。「現代の感染症患者の心性を描き出している」(片山亜紀による解説)とも言えるだろうが、それだけでなく、患者であるか否かを問わず、我々は本来皆が「横臥する者たち」であったはず、そうじゃなかっただろうか?と思いたくなる。なぜなら「横になってまっすぐ見上げたときの」この世のあらゆるものの信じがたいほどうつくしい有様が、ヴァージニア・ウルフらしさ満載で、ここには描かれているじゃないですか。というよりもここでは自然の光や花や空が描写されているわけではなくて、それを見たときのおどろきとよろこびと、それを誰かに言いたい思い、伝えたい嬉しさと恥ずかしさの混ざり合ったような、そういった心の内側の、自然の景色と同じくらいよく動き回る現象がとらえられているようで、というか、それがつまり描写ということで、それがそれに閉じることなく、なんでもなくまた次の言葉へ繋がっていく。この仕草、誰かの振舞いの流れ…ふだん自分の時間の多くを「直立人たちの軍勢」へ加担することに費やしてしまっていることを恥じ入りつつ何度も読み返したくなる。