生理食塩水

ハナノアという鼻孔を洗浄するための商品があって、自宅には常に常備していたのだが、昨今の時世の影響かどうかは知らないけど、最近どの薬局に行ってもこの洗浄液がまるで手に入らない。完全に品切れ状態なのだ。まあ、気が向いたらちょっと使うくらいのことで、無くてもとくに困らないのだけど、しかしあんなものが品切れするだなんて、世の中はまるで謎めいているな…とか思っていたのだが、しかしふと気づいたのだが、ハナノアの洗浄液というのは、よくよく考えたらただの生理食塩水なのだ。そのことは以前から知ってはいた。知ってはいたが、それはそれで記憶の奥の棚にしまいこまれていた。それで、惰性的にあの洗浄液500ccで700円だか800円だかするやつを、使い切るごとに、あらたに買い直し続けていたのだ。よく考えてみると、とてもバカバカしい買い物ではないか。たんに濃度1%弱の塩水ごときに浪費せず、同成分を自力で作ればいいだけじゃないか。そう気付いて、早速お湯に食塩を溶いてみた。軽量スプーンが5mgしかなかったので、500ccに4.5くらいと思われる塩を溶いた。溶かして味見してみたら、ああこれはなるほど、まさに涙の味そのものだと思った。いきなり炊事場の鍋の中に、自分の体液が大量に出来上がってしまったような気味悪さを感じたが、なにはともあれ早速ハナノア利用を検証してみた。容器に入れて、ぐっと鼻に注入して、おお・・っとなって中断した。熱い。まだお湯が熱すぎた。しばらく待つ。三十分くらいして再度試す。おお…まったく問題ない。快適、いい感じだ。ハナノアのような爽やかなミント香は当然ないけど、そんなもの必要ない。これで充分だ。これでもう、ハナノア購入の必要がなくなったわけで、満足な結果だが、500ccも作ったところで、一度でそんなには使えないから、それはそれで困る。保管しておくのもアレだし。次回はもっと少ない分量で作ろうと思うが、そんなことしているうちに次第に、割合も適当になってくるのだろうなあとも思う。まあ100ccもあれば一回の洗浄には充分なので、必要な塩は0.9gだが、それを目分量でさっと入れるのは熟練が必要かもしれない。