マーチ

朝からかなり強い雨が降っていたようだったけど、出掛ける直前に晴れて太陽の光がさんさんと降り注ぎ始めた。水にぬれた路面や植え込みの緑や木々が猛烈に光を反射させはじめて光の洪水みたいになっていた。夏のはじまりですね…という感じ。

小中学校はもう通常通りで、子供たちもふつうに学校へ通っているのだろうが、土日の部活動はまだやってないのか。社会人のサッカーチームや草野球のチームは、いつも通り学校や公園のグラウンドに集まらないのだろうか。休日の日中、買い物の途中で中学校の脇を通るときに校舎内外が静かで、吹奏楽部んの練習する音が聴こえてこないと、なんとなく物足りなくてつまらない。

鼓笛隊がマーチのリズムで行進してくる。チューバとホルンが、低音を繰り返しながら膝を高く上げて揃って歩いてくる。トランペットは幼い顔の頬っぺたを膨らませて真剣なまなざしで虚空を見ながら主旋律を奏でる。音がだんだん近づいてきた。近所の人達がおもてに出て、手拍子で送る。楽団がその前を横切って、ゆっくりと進む。買い物袋をぶらさげて並んで突っ立っている僕と妻の目の前を、バンドが足取り軽やかに通り過ぎていく。そして後ろ姿が、少しずつ遠ざかる。音がだんだん小さくなって、やがて聴こえなくなる。しかし消え去ることはなく、かすかな音が、夕方の空に溶けることなくいつまでも響いている。