仕込み

前にちょっと口約束しただけの話だったのに、まさかこんなにたくさんお裾分けしていただけるなんて、どうしよう…と、ひたすら恐縮するほかないような贈り物を、居酒屋の店主からいただいた。今朝、千葉の沖合で釣ってきたばかりの鰺と鯖が、ビニール袋にぎっしり入っている。出刃包丁買って、魚を捌くの練習中なんでしょ?だったらこれで練習しなよ!とのこと。感激・感謝・驚だが、今日これから帰宅して、夕食を摂り終えたあとで、僕はこのずっしりと重い魚たちの、少なくともはらわただけは全部取り除かなければならないのか。それだけは、睡眠時間を削ってでも、なんとしてでもやり遂げなければならない。

実際はじめてみたら、思ったほど時間はかからなかった。ただしやり方と仕上がりが、あいかわらずやや雑な気はした。とはいえ釣れた魚は大きい小さいの個体差にバラつきもあり、捌き方も意外に通り一辺倒ではいかないところもある感じだ。というよりもスーパーで売られている魚は皆一様に同じサイズ感で揃えられていることを実感する。手を止めずに、ひたすら捌く。流しもまな板も包丁も血に染まったが、その有様にもさすがに慣れてきた。小骨を取るのは後日にして、おろしただけの切り身をかたっぱしからラップにくるんでいく。鯖ははじめて捌いたので、これでいいのかわからないながらも、一応はそれなりにおろせた。これらも全部ラッピング。冷蔵庫にしまう。

一尾分だけ刺身にして、その場に立ったまま、葱、生姜、醤油で食す。せわしないけど、美味しい。まあ、自分でさばいて食べたら、こういう食べ方になるよな、と思う。もう半身分切る。口にしてから、その半身は皮を剥ぐのを忘れたことに気付く。皮が付いたままの刺身はやはり食感悪いことがわかった。