くるり、刃疵

くるりのドキュメント映像配信「[特Q]ツアー リハーサルの記録」を観る。ライブツアーのリハーサル風景を三十分くらいの映像で、頭から終わりまで聴けるのは冒頭の「Morning Paper」くらいで、あとの曲は途中ぶつ切りばかりで、しかも岸田の声は風邪のせいかまるで調子悪そうなのだが、しかし見応えあった。とても良かった。くるりはなんと凄いバンドになってしまったことかと今更のように思った。ギター×2、ベース、キーボード、ドラム、トランペットによるロック・アンサンブルとしか言いようのないサウンドだ。それぞれの楽器の音が組み合わさってあらわれる厚みと立体感のすばらしさ。音色の伸びやかさと粘っこさ、リズムの緩急、ため、勢い、どれを取っても、円熟の境地というか、完璧な熟成の酒というか、そんな圧倒的な印象を受けた。

性懲りもなく本日も買ってきた鰺を捌く×三尾。その作業中、遂に指を切った。おめでたいことに、買った包丁ではじめての怪我である。ほんの少し、数ミリだけ刃先が親指脇を滑って、それだけでサッと堰をきったように出血した。傷みはほとんどないし、傷口も小さいのに、出血だけはしつこい。やはりこの包丁は切れあじが良いのだなあ…と謎の道具満足に浸るも、まだ作業の途中でありこのままではまずいので、急遽ティッシュを巻いてその上からバンドエイドで止めた。すでにまな板の上で人間と鰺の血液が一部混ざり合って汚い。でもやはり魚よりも人間の血の方が色が鮮やかだ。いったん全部洗浄・清拭して、気を取り直して続きをやる。親指不自由だと相当やり辛いが、かろうじて最後まですすめた。血もその後ほどなく止まった。このたびの事故は、"ぜいご"を取るときのミスで、如何にも包丁初心者がやりがちな失敗ではあるのだが、自分は"ぜいご"を取るのが上手い…と、これまでの経験で、じつは密かに思っていた。それが思い上がりなのだ、そういう油断から、ミスが誘発されるのだと、捌かれている鰺が、捌かれたその我が身をもって教えてくれたのだ、きっとそうに違いない。