面白

煩雑で厄介で面倒事が山積みだが、それがむしろもっとも厄介な問題を見えなくしてくれていて、必要とされていることをかろうじて信じることができ、自分の存在価値をかすかには感じていられる、そういう生があり、逆に厄介事や面倒事など何もなくて、金はないけど時間はやたらとある、誰とも会わないし、誰とも話さない、何の起伏も刺激もないいつもの場所に、自分だけしかいない、そういう生がある。その二つの生のどちらにも惹きつけられ、そのどちらの要素も欠くことができないとはいえ、前者に近い生を選んでこれまで生きていたので、後者への憧れを強くもつところはある。しかし後者の生が、おそらくじぶんには耐えられないだろうということもある程度予想がつく。いずれにせよ時間を重ねるとともに、この今が、どんどん面白くなくなってくるというのは、避けがたくある。その面白くなさを、モノのようにぼーっと見つめているみたいな時間がじょじょに増えていく。他人が喜んでいたり騒いでいると、少し気がまぎれるというか、そうか、あればやっぱり、それなりに面白いことだったのかもしれないな…などと、思い直したりすることもある。他人のフリに合わせているだけで、人の歓びまで自分のものだったかのように思えることもある。