再帰

トキ・アートスペースで杉浦大和展。いつも通りの、変わらない世界でもあるが、しかし今までとは何かが違うとも感じる。それを機会ごとに、作品を見るたびごとに、毎回感じている。それは変化の振れ幅が一様であることを意味しない、そうではなくて、ただし変化だとしてもごく微細なのでほぼ知覚できず、内的に判別しがたいような、しかしやはり、何かが違うのではないかという思いが、根拠のない予感あるいはかすかな不安のようにわきあがるようなもので、その気掛かりが、いったい何に起因するのか、色彩の選択傾向なのか形態のあらわれ方なのか各要素にはらまれる気分的なものの天気のような変化の違いなのか、はっきりとはわからない。だからそれは作品に起きていることなのか自分に起きていることなのか、それもよくわからない。四方の白壁に取り囲まれた、このギャラリーそのものがこじんまりとしていたながらうつくしい空間だが、その中央に立つ自分を取り囲むように壁に並んでいる作品たちの、物質としてのキャンバス地、そこに絵の具が置かれて、形態、色彩、行為の痕跡、その他もっと微細で不可視な要素たちが、ひとつひとつ丁寧に呼び出されてきて、ある速度でむすびつき、何らかの関係を結んで、感覚としては一度きりのイメージが連続して立ち上がる、それは今まさに目の前で起こっている、それをたった今、駆動するライブ感をもって受け止めている。この新鮮さを受け止めるために、過去の経験の記憶が必要で、むしろこれは今でなく、それまでの自分が囲い込んでいた過去の記憶こそがざわめているのではないかとも思う。