大船国

横浜から上野東京ラインの上り電車に、毎日乗って帰宅するのだが、いつものようにボーっと上の空で乗車して、しばらくしてふと気付いたら、電車は大船駅に着いたところだった。わー!っと思って飛び降りた。なぜ反対の方向に乗ってしまったのか、さっぱりわからない。今まで何百回、同じホームで同じ方面の電車に乗っていると思っているのか、どうすればそんな間違いが可能になるのか、小一時間問い詰めたい思いである。しかも次駅の戸塚で、そこを川崎に着いたものと思っていてやり過ごし、次の大船を品川に着いたと思って、なおもボケっとしていたのだ。たまたま開いたドアが、品川で開く方と反対だったので、あれ、なんかおかしいな、いつもとちがうなと思って、周囲を見回したら、あれー、外の風景が、いつもと違う…と思って、あれ、これはもしや、あれか、あれだな、あれだな、と思って、じわじわと現実を受け入れて、わー!っと心でで叫んで、やっちまった、あーあ、ここはもう、耐えがたきを耐え、受け入れがたきを受け入れ、受容のこころで静かに引き返そうと心に決めて、電車を降りたのだった。ああいうとき、突然異国の地に放り出されたかのような気持ちになるし、周囲の乗客もまるで別の人種ばかりに感じられる。ほんの一瞬だけだが(上野を誤って乗り過ごし忸怩たる思いで尾久あるいはその先の駅に降り立つときも同様)。