荒木ファン

ウィキペディアによれば、荒木飛呂彦が「バオー来訪者」をジャンプに連載していたのは1984年の45号から1985年11号までの17週で、当時中学生だった自分が「バオー来訪者」をはじめて読んだのは、すでにバオーが敵の本拠地に乗り込もうとする段階だったので物語もすでに終盤に近かったはず。少年ジャンプの打切り候補が追いやられる最後尾の場所に載っていた。

自分が「バオー来訪者」にはじめて強く惹かれた最初がその何号目だったかの扉絵で、黒い背景にバオーが独特の姿勢で立っており、アルファベットの巨大な「BAOH」四文字が白く上部に浮かび上がっているイメージ。文字説明一切なしで、それこそ「PARCO」のポスターを彷彿させるみたいな感じで、ジャンプ連載漫画らしからぬセンスを感じさせたし、それに背表紙の手前のページに連載陣の各作者が一言コメントを寄せている箇所、そこに荒木飛呂彦は「デ・パルマの新作『ボディ・ダブル』が見たい!」などと書いていて、当時自分はデ・パルマなど知らなかったのだが、そういう"アピール"をする漫画家なのかと、そこも印象に残ったのだった。

その後単行本の一巻を入手して精読し、物語の構造とか詳細な設定を理解してますますその世界にハマっただけに、あのブツンと断ち切られたような最終回は何とも寂しいものであったが、これは仕方がないことだと、さすがに当時の自分も「ジャンプの事情」については理解していたのだった。

なので自分はけっこう早い段階で荒木飛呂彦のファンだったのである。「バオー」連載終了後もその熱は冷めず「魔少年ビーティー」単行本を入手し「ゴージャス☆アイリン」連載開始(1985年)をよろこび、そして「ジョジョの奇妙な冒険」(1986年)連載開始を迎え、中学を卒業し高校生になり、いつしかジャンプは買わなくなっても「ジョジョ」は追いかけていたはず。おそらく九〇年代半ばあたりまでは読んでいたはずだ。"ジョルノ・ジョバァーナ"が出てきたあたりまでは、読んだはずだ。

だから先日テレビで放送された「岸辺露伴は動かない」も、一応は(岸辺露伴というキャラクターについては)知っているのだ。しかし細かいことはほぼ忘れている。テレビで見てたら、あーそうそう、、こういう感じ…だったな…と。

現在の自分が荒木飛呂彦作品を当時のように熱心に読むことはたぶんないと思うが、ものすごくセンスのいいカッコいい部分と絶望的にダサい部分があって、それが独特の混ざり合い方をしているのが荒木飛呂彦作品で、それは初期の頃から見事に一貫していたと思う。