天気雨

これ以上ないほどの晴天で、木々の緑や空の青が、光と一体になって輝きながら風にそよいでいて、物とそうではないものとの境目がほとんど曖昧になってる。公園に寝そべり、並んで座り、子供たちと遊ぶすべての人々が、そんな光の下で、思い思いに自分らのことに没頭していながら、同時に誰もがその光の状態にこころを浮かされて、うっすらと恍惚の気分をたたえてその場に呆然としているかのようでもある。

空は晴れたままなのに、やがて雨が降りはじめる。見上げても空には雲ひとつなく、単色の空が広がっているだけなのに、まるで嘘のような光の筋を無数に引きながら、雨は遠慮なく降り注ぐ。

しばらくのあいだは公園の誰もが、突然の雨を本気にしていない様子だった。それでもしばらくして、所々で傘の広がるのが見え始めた。たしかに前髪や、シャツの袖や、襟元や、スマホの画面に、水のしずくが点々と付着するので、こんなお天気の日なのに、雨は降っている。

しかしこの光の下で、傘を挿そうとする人は意外に多くはない、雨に濡れることに、いつもよりずいぶん寛容になってしまった人々が、もうしばらく様子をみようかといった態度で、あいかわらず晴天の下、ふりそそぐ光と一緒に、目前の広場の様子を見つめている。