閉店

いつもの店で髪を切った。そしてこの店は、今月で閉店する。ずっと担当してくれていた人もご実家に帰って家業を継ぐそうな。およそ二か月に一度の間隔でこの店に通いつづけて、たぶん二十年近くが経った。それが今日で最後とは、あまりにも唐突ではあるが、それを知らされて、最後の予約を入れて、本日さも当然のようにそのときが来たという感じだ。と言っても、ラストの特別感にあふれてるなんてことはまるでなくて、いつも通りの世間話しながらの小一時間を過ごしただけ。ドラマチックなファイナル気分というか、卒業式的、送別的な、もう二度と会えないねさようならみたいな、そういう感傷というものからはるかに遠く離れてしまって、今日がラストだとわかってはいても、それをことさら言い合うでもなく、お互いに、いつも通りにしか出来ないという感じである。それを口にし辛いとか湿っぽいのが恥ずかしいとかでもなくて、単にそんな話してもしょうがないし…という感じである。

それにしても、次回からどこで髪を切れば良いのか。まるで投げ出されたかのように、いきなり難民になってしまった。この年齢でひとりの男性が、あらたに通うべき美容理髪系を探すのって、意外に難易度高くないか。通う呑み屋を探すのよりも、よほど難しくないか。