靴紐

靴といえば、自分はハイネックの、いわゆるチャッカブーツを好む傾向があったのだが、今は一足しか持ってない。もう一足くらいあっても良いかなとも思うが、何もその形状にこだわらなくてもいいかな、とも思う。形状にこだわると、選択肢の狭まりがつらくなって、しまいには買うのが嫌になってくるのだ。

でも靴もそうだけど、総じて、買い物が面倒くさいなあと、最近は感じる。選んだり吟味したりするモチベーションを維持することに困難をおぼえる。生地と形状だけ指定すればネットで注文できる洋服屋も最近はあるけど、そのサイトに入って注文することすら面倒くさく感じる。むしろお店に行って萎えきったその心を再発奮させなければいけないのだろうけど、またいずれ、次の機会で、、と思ってしまう。

しかし靴紐はダメになるのだ。靴紐を買うのは、たぶん二年に一度くらいの頻度だ。靴紐って、そんな頻度でダメになるものだっただろうかと思うけど、ここ十年くらいは、ずっとそのくらいのペースで買い替えてる気がする。丸紐の75センチで、300円足らずのやつだ。そんな安物じゃないのもあるのだろうけど、自分はそれで充分だと思う。

とはいえ結び方や締め方によって、長持ちしたりしなかったりするものなのだろうか。僕は一日のあいだで、けっこう細めに結び変える。というか、会社だとオフィスにいるあいだはサンダルに履き替えたりする人もいるけど、僕はずっと靴を履きっぱなしなので、紐だけをすこしゆるくしたり、帰宅前に結びなおしたりする。ハイネックの靴をぎゅっと締め直したときの、靴が足全体を締め上げるような感覚は、昔から好きだ。あれだけの締め上げる力を支え続けたら、紐が担う負担もさぞかし大きいだろう。いつも紐と穴の接するところから、ぼろぼろと表面の繊維がほつれて、やがて細かったものが膨張して不格好に崩れ始める。そこにまた、これまで紐が担っていた多大な負荷が垣間見えたように思えて、それに対してもかすかな満足というか快楽をおぼえるのだ。