アネット

角川シネマ有楽町レオス・カラックス「アネット」を観る。思ってたのと違った、というか…そうか、こういう感じだったか…という感じ。

オープニングは圧倒的に素晴らしく、森の中を二人でデートする場面も、アダム・ドライバーが跨るバイクの疾走も素晴らしく、二人が住む住まいも、そして二人のベッドシーンも、たいへん見ごたえのあるものだった。マリオン・コティヤールの水着姿、悲痛な表情で背泳ぎしながら歌う場面も、トイレで用を足す場面も、ステージの背景からいきなり森の中につながっていて、しばし森の中を彷徨ったコティヤールが再びステージに戻っていく場面も、車の後部座席で少し眠ろうと横になり、悪夢にうなされて目覚める場面も、いちいち良かった。

なので、マリオン・コティヤールがほぼ姿を消す後半以降は、正直ちょっと気持ちが離れたというか、やや付き合いきれない気分のまま、やたらと長い上映時間を最後までじっと我慢していたような感じ。もうアダム・ドライバーの肉体の男臭さが、見てるだけでここまで匂ってきそうで辟易とさせられる。

アネットの姿(外見)や、自家用船での嵐の場面も、とにかくこういうことをやりたかったのだろうと思えば、それはそれで面白いと思うし、ラストシーンというかエンドクレジットの場面も良かったけど、なんだか全編通じて、良い箇所とそうでもない箇所が、見事にばらばらに並んでるようで、たぶんそれをきちんとひとつながりで感じることが出来ないのは、おそらく観ている自分の責任というか自分に非があるのだろうけど、もしかするとこれってつまりスパークスから発したインスピレーションというか、もはやお約束な趣味性に近いロックオペラ風味のこれでもかといわんばかりのベタな再現につきあえなければ、如何せんどうしようもないものでは…とも思った。