ラーメン

外食でのラーメンを、もう十年近くかそれ以上の期間、食べてないのではないか。家で、インスタントラーメンを食べたことは、これまであったかもしれないが、それもおそらく数えるほどだ。ラーメン店に入ったことが近年まったくないし、「つけ麺」と称する食べ物を今まで一度も食べたことがないし、おぼろげな記憶による直近でラーメンを外で食べた記憶といえばそれこそ十年近く前に、人に誘われてなかば断りきれずに入った店で食べた、それが一度か二度。自分の意志で行って食べたラーメンとなると、もはや三十半ばの、はるか昔だろうと思われる。たぶん四十歳あたりを境に、ラーメンは食べたくなくなったのだと思う。いや、食べろと言われれば食べるし、食べたら美味しいのだと思うけど、なんとなく自らは食べなくなってしまったのだ。理由はわからないけど、味の嗜好が変わったとか、そういうことではなくて、おそらく食…いや、食事、に対する感覚が、変わったからだと思う。生活に対する食事の比率というか重みというか意味合いが変わった、その時間をこう過ごしたいという、その欲求が変わった。そのことによって、ラーメンの出る幕がなくなったのだと思う。食の嗜好が変わったのではなくて、生活感覚が変わった、逆に言えば、それを必要とする生活感覚が備わって、はじめてラーメンを食べられるのだと思う。