コーヒー&シガレッツ

Amazon Primeジム・ジャームッシュコーヒー&シガレッツ」(2003年)を観る。面白かったけど、とくに感想はない。十何篇かの短編にわかれたオムニバス作品で、どれも取り立てて印象に残るような箇所があるわけでもなく、緩く適当に、些末などうでもいいことが、あるいはそれなりに悲壮な話が、いずれにしろあまり深入りすることなく、ゆるゆると続いていって、気づけばおしまい。終わって、あ、もう終わりかと思った。

どの作品もそれなりに有名な役者が出ていると思うのだが、それら一人ひとりを、これはあの役者であると観る者がわかっているのが前提の作品という感じがする。べつにわかっているとより色々わかるということではなくて、わかるわからないを問わず作品の見え方自体は一緒だし、わかってる人だけに見える特別なサインとかは無いけど、しかし、きっとわかっているでしょうと。作品のこういう感触自体が、もはやひと昔前のムード、と言って良いのではないかと思う。こういう了解事項を前提に出来た、お遊びムードをチャラっと広げることができた時代だったのだと。今だとむしろ日本のドラマで(若者向きじゃない企画で)ありそうかもしれないと思う。

しかしイギー・ポップも、トム・ウェイツも、ああして、それなりに、もっともらしく芝居するのだな。

2003年とは、それがどんな年だったか、そのときの自分がどんなだったのか、今となっては思い出すのも難しい。個人的には80年代や90年代より、00年代初頭が感覚的にもっとも遠い感じがする。