フジロック配信その他

フジロックの配信で一日目のハイエイタス・カイヨーテは観られなかったのだが、二日目夜のネイ・パームのソロ・セットは観た。ギター一本での弾き語りで後半はコーラス参加という、如何にもキャンセルの代役というかピンチヒッター的なステージではあったけれども、だからこそ余計にこの音楽家の素の部分が見える感じがした。単にストロークだけなのに、ああ、この人ギター上手いなと思う。というか上手いというより高度なのだと思う。つまり好みというか、自分にはこういう、ちょっと音楽的偏差値高いめな内容に惹かれるというかココロ躍るというか、ある種のあこがれ的なものがあるのだろうと思う。ちょっと小難しいことを屈託なく飄々とやってる天真爛漫な女の子みたいな。しかしおそらく似たような要素もあるかもしれないエスペランサ・スポルディングより、ハイエイタス・カイヨーテの方を僕はより好むようだ。

まあ何にせよ、音楽が演奏されているところの映像を眺めているのは楽しいものだが、その翌日になると昨日までの楽しさがまるで泡のように消えているというか、昨晩のあれはそれほど面白いものだったのだろうか…?と、醒めた気分がふいにわき上がってくることもある。

今この場で、この目とこの耳で体験しているときだけ素晴らしくて、あとで思い出そうとしても(音の細部はもとより聴いてるそのときの気分さえ)うまく思い出せない。ライブで聴いた音楽とは、概ねそういうものだろう。一回限りのその場に立ち会うこと。かつその場にいてもすべてには立ち会えない。同じ場に集まったとしても、私とあなたは目的も体験も違う。原則としてすべてを回収できない、フェスのそういう贅沢さ、その一片だけを、施された配信で味あわせていただくという。