Spiritual Unity

おそらく1990年前後だと思うけど、アルバート・アイラ-の名をはじめて知って、それを聴いてみたいと思った時点で「Spiritual Unity」はまだCD化されてなかった。だからLPレコードを買ったのだけど、これがなんとも軽くて薄っぺらい音で、たいへん驚いた記憶がある。音楽がどうのこうのではなく、「録音物」という感じがした。いや、そのもっと軽い、駄菓子のような安さを感じた。

あれが何だったのか、いまだによくわからない。なにしろ「Spiritual Unity」は、あれ以来CDや他媒体で聴いてないのだ。それも我ながら不思議だが、自分にとって「Spiritual Unity」はあの音、という記憶が硬く残っている。

収録曲でいえば、"Ghosts"よりも、"Spirits"の方を好んで何度も聴いたし、今でも"Spirits"が好きだ。しかし自分にとってアイラ-ならば「Spiritual Unity」よりもライブ盤の「Prophecy」だったし、さらに言えばInpulseのグリニッジヴィレッジのライブ盤の一曲目に尽きた。

アイラ-の"Ghosts"を、なぜか最近ふと思い出して、そういえば「Spiritual Unity」をあの音以外でいまだに聴いてないと、いまさらのように思い出した。だから聴いた。AppleMusicならロスレス音源だ。

しかし聴いて、その違いはわからなかった。これが「Spiritual Unity」ということ以外はわからない。そしてやはり"Spirits"が素晴らしい。素晴らしいというか、あの演奏の続いてる時間を、これをどうすれば良いのか途方に暮れる。何か輝かしいものを一方的に浴びてる状態の自分に戸惑う。おそろしいまでにすることのない、退屈で、空白で、満ち足りた時間がいきなり強引に与えられた、そんな感じだ。

アイラ-は、やっぱりいいな。小賢しい言葉をきれいに消し去って掃除して消毒してくれるような感じがする。それを最優先するのか、後回しにするのかを、こちらにゆだねてくる。それを素晴らしいだなんて簡単に言ってくれるなよと、凄まれる感じもある。