かつて

初老の主人公が、かつて恋人だった女のもとを訪ねる。
二人は何十年ぶりに再会する。
女は泣きながら、なぜ今になって姿をあらわしたのかと、男にたずねる。
確かめたいことがあったから、と男は答える。
そのときドアがノックされ「母さん、入っていいかい」と、若い男の声が聴こえる。
女はあわてて「ちょっと待って」とドアにこたえる。
そして女は男に告げる。もしノックされたあのドアを開けたら、あなたは一生後悔する。
でも反対のドアを開けてこのまま帰るなら、あなたが傷つくことはないと。
男はドアを開ける。ノックされたドアを。
ドアの向こうには、背の高い青年が微少をうかべて立っている。
それは主人公が少年の頃からずっと共に過ごして、やがて行方を見失ったかつての親友の青年期の姿そのものだった。

という何かの映画の話とは何の関係もないのだけど、たまたま帰りが一緒になった人に、今お子さんお幾つでしたっけ?と聞いたら、もう小学生ですよと返されて、愕然となった。だってついこの前、生まれましたと聞いたばかりじゃないですか。それってなんかおかしくない?と思うのだが、自分個人の納得にかかわらず、どうも時間の流れは、それで整合が取れているらしいのだ。