夕立


午後、映画の撮影みたいな、ものすごい雨が降った。窓の外を見ていると、連なる民家の全ての屋根に雨が等しく斜め一直線にあたって、勢いよく跳ね返って、あたり一面に水煙がうっすら白く漂い、そのまま風に流されており、雨自体の光沢と靄のかかった鈍い景色の渾然となったやたらと劇画的な景観であり、こういう光景というのは人工的に作り出さなければありえないと思っていたので、いざ目の前にそれがあると、まるで冗談のように思えた。遠くでずーっと雷の音が鳴ってると思ったら、それは雨樋に大量の雨水が流れ込み、ものすごい勢いで下の排水溝に注ぎ込まれている音なのだった。しかし、夕立というのは時折自然がみせるほんの数分間だけの、そのときに限っては遠慮も躊躇もなったくない全力での振る舞い。という感じである。普段は温厚、というか、何も考えておらず只漫然としているが、なぜかいきなりキレる、という感じ。どことなく猫の所作に似ている。