京成線の堀切菖蒲園駅のプラットホームのベンチは、よく見かけるような線路側を向いた横並びではなくて、電車のボックス席のように向かい合って設置されている。

だから反対側のホームに立って見えるのは、向かい合ったり背中合わせで座っている人々の姿と、そのホームを支える鉄骨の支柱と、柱に遮られながらその下に広がる川土手や街並みや景色である。

良く晴れた明るい光が降り注いでいるので、前景であるホーム上の人や物のすべてが、まるで写真を貼り付けたみたいに、現実感がなくて、座ってるおばさんたちが、宙に浮かんでいるみたいに見える。人々が皆、横を向いているというだけで、その虚構感に拍車がかかる感じがする。

京成線という路線は、流れる時間が他とは違うとしばしば思う。高架上のホームが多くて、電車を待つ人々もどこかぼやっと、中空に留まって揺らぎつつ、心ここにあらずな雰囲気がある。現実の時間に準じて、というよりは、荒川とか江戸川の流れに準じて、走行しているのではないかという感じがする。

ということは、もしかして、渡し船の系譜をこの路線は、どこかで引き継いでいるのだろうか (横向きの人つまり船上の人) 。