2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

「夫婦」

CSで先週の金曜日に録画しておいたものを、やっと先程観る事ができた。「夫婦」は初めて観る1953年作品。久々の成瀬作品鑑賞である。始まって5分もしたらもう「おぉーー」と深く声に出して唸ってしまうくらい「良い」感じが横溢しているので、それだ…

日記(Nikki)

学生のときに美術を学んで、その後も絵を描くという事から完全には離れられず今日までやってきましたが、20代後半で美術とは無縁な企業に就職もしましたし、その後結婚もしまして、現在も会社員でありながら、まだ絵も描いていて、そういう生活でもう36…

青空

それにしても昨日の天気の良さは異様なほどであった。世間一般ではあの天候を評して一言で簡単に、秋晴れ、という言葉をもってあらわし、それで涼しい顔をしていられるのであろうが、そのような言葉ではちょっと勿体無いほどの素晴らしい天気であった。何し…

「エドワード・ヤンの恋愛時代」

asin:B00005H1H7 VHSにて。本作を再生し始めてすぐ、ああ何年か前にも一度観てるなぁと思い出したのだが、物語の内容は全くおぼえてなかった。で、冒頭から容赦なく押し寄せてくる圧倒的に素晴らしい展開のスピードに驚き、あぁこんな映画だったっけ?と…

「東京から考える」

先ほど読了。面白かったので自分としては珍しく結構一気に読んだ。埼玉の、国道16号線を行き来する車が窓から見える家に育ち、現在は足立区に住んでいる自分にとっては極めて「近い」感じがする本であった。というか自分はまさに「郊外」の人で、この本で…

世界/鑑賞/映画/旅行

旅行ってのはいいものだ。…旅行の良いところは、旅先というのが自分の中の夢や幻想ではなくて実在するという事だ。それは自分の想像力の外側が実在するという事なのだ。 しかしいつもそうなのだが、旅行から帰って来て玄関の鍵を開けて自室に入り、旅行鞄の…

「世界」

DVDにて。なかなか難しい映画だという印象…とっかかるところがとても少なく感じられる。決して退屈でもつまらないという訳でもないのだが、何とも捉えがたいし、今何を書けば良いのかもよくわからない。とりあえず探り探り書いている次第。 世界公園とい…

「東京オリンピック」

DVDにて。うーん。これは破格にすごい。面白いし、素晴らしい。市川崑の作品としか云いようの無い出来だろうと思う。対象を掴み、把握し、極めて強烈な作為をもって料理する確信に満ちた手つきがすごい。ジャ・ジャンクーの「三峡」か?と思うほどの瓦礫…

「殺しの烙印」

DVDにて。うーん。これは破格にすごい。相当な量の映画的な出来事たちがみっしりと詰まっていて、とても時間が一時間半とは思えない。普通の90分の映画が含んでる情報量の2倍くらいある気がする。「ハードボイルド」と云っても、イメージされたスタイ…

「松ヶ根乱射事件」

DVDにて。真っ白な雪原に倒れている女性を俯瞰したファーストショット。倒れている女性を発見した小学生くらいの男の子が傍に近寄ってくる。しばらく見下ろし、やがてしゃがみこみ、動かない女性の胸元をまさぐり、続けてスカートの中にも遠慮なく手を入…

TVでF1観戦の直前に記す

1センチくらい削り出して露出させた色鉛筆の芯を誤って折ってしまった場合、その折れた芯を捨てる気にはどうしてもなれないものだ。だから小皿に放り込んでおく。これを何とか有効利用できないだろうかと思っていたのだが、今日何気なくステッドラーのコンパ…

「おとうと」

岸恵子と川口浩の掛け合い漫才みたいな軽快なやり取りはなかなか良い感じだ。弟のような年下の、他愛も無い内容で気兼ねなく軽口を叩けるような対象を相手にした女性の表情や仕草。岸恵子のそういう芝居を堪能したいならこれ!って感じだろうか?田中絹代と…

「百年恋歌」

DVDにて。60年代のパートが大変素晴らしかった。殊に冒頭のビリヤードのシーンは、大変含みと奥行きのある、たっぷりした余裕の構えで、ほとんど出来事らしい出来事は起きていないかのようで、でも実は瞬間瞬間に確実に何かが揺れ動いているような、簡単…

「ラウンド・ミッドナイト」

CSにて。さっきたまたまやってたので観始めたら最後まで観てしまった。。デクスター・ゴードンの姿やドアップの表情を見てるだけみたいな映画である。それだけで満足できるほど、この映画のデクスター・ゴードンは素敵である。恐ろしく長身で痩せているが…

システムとドライビング Part2

前回の続き。…肉体という物質は、古来から人間と動物に根本的な違いはない。ギリシャ人と現代人にも肉体の物質的差異はないだろう。肉体とはたとえば一定量を超える衝撃を受ければあっけなく壊れて潰れてしまうような柔らかい有機物から成る構造体に過ぎない…

「F1グランプリ 栄光の男たち」(システムとドライビング Part1)

Windowsから古いシステムにエミュレータを使ってログインしたりすると「21世紀の真ん中に前世紀の真っ黒い落とし穴が開いた」ような錯覚をおぼえる。というと大げさだがまあそんな感じもなくはない。とはいえ技術は昔の技術を受けて改良され、それに上塗りさ…

恋の味をご存じないのね

特定の何かをじっと見つめていると、それが何なのか却ってわからなくなるという事はよくある。「映画」というものがあって、それはきっと、何か目くるめくときめく夢のような特別なものなのだと思うが、でも空気の淀んだ薄暗い部屋の発光するモニタ上でささ…

「2/デュオ」

上野ツタヤに突然VHSが入荷されたのでレンタル。西島秀俊と柳愛里が仲良くカップルである。ずーっと回しっ放しになっているカメラの前で、「あ、お菓子買ってきて」「どんなの?」「なんでもいい」「甘いのしょっぱいの?」「どっちでもいい」みたいな会…

「西瓜」

面白い。相当、AVだけど…。しかしツァイ・ミンリャンという監督ってどの作品にも共通する間合いと呼吸の感じがあって、…本当に色々な事に挑戦するものだと思いながらも、ああやっぱり本作もツァイ・ミンリャンだなあとも思う。 水不足で断水が続く真夏の台…

車を誘導する人

映画「秀子の車掌さん」には、狭い路地でトラックが方向を変えるのに難儀してるところに出くわした高峰秀子が、車掌らしい手慣れた手つきでオーライオーライと誘導してあげるシーンがある。(というかオーライオーライと手を振ってる高峰のバストショットだけ…

「秀子の車掌さん」

CSにて。バスが遅い。ゆっくりとこちらに向って走ってくる。時速20kmくらいか?素晴らしい遅さで、ぶーーんと近づいてくる。1941年の日本の田舎の風景。(半年もしないうちに真珠湾攻撃するのだ。)真っ白い未舗装道路で、周りはぽつぽつと建物が立…

「風の中の牝鶏」

とにかく、生きるためにはなんでもしなければならない、という状況下があった。というか、今もある。生きるのは楽じゃない。それは思った以上に大変な事であった。生きるためには相当色々と努力も配慮もしなければならない。それなりに稼がなければならない…

「水で書かれた物語」

DVDにて。正直なところまあ、特に面白くもつまらなくもないという感じでしか感じられなかったのだが、しかしこの時期(1965年)に、ある人が、ある状況下で、このような作品を作らなければならなかったのだ、という確固とした理由があるのだろうと想像…

「長江哀歌」

日比谷シャンテにて。…ものすごい映画であった。冒頭のあの豊饒な暗さを含んだ労働者の群集をカメラがぐるーっとパンしつつ捉えるファーストショットで、とんでもない作品だと思った。で、常識を遥かに越えた様な高さに架かっている橋のちょっと下に、監督名…

「青春残酷物語」

DVDにて。1960年(昭和35年)公開の映画だ。主人公の川津祐介は1935年生まれで撮影当時25歳くらい、桑野みゆきは1942年生まれで当時18歳あたりだろう。父親役は劇中、影が薄いが、おそらく大正〜昭和初期生まれの設定であり太平洋戦争を…

「秋津温泉」

DVDにて。冒頭からどのシーンも非常に手間が掛かっていて、かつ美しい撮影で、戦時下の田舎の温泉宿の感じとかが非常に生々しい。敵機の飛行機雲が見え警報が鳴り、空襲を恐れて汽車の荷台に居た乗客がさーっと蜘蛛の子を散らすように汽車を降りて田園を…

実存主義と思い込みと私

「世界はこんなふうにも眺められる | Web草思」 の保坂和志のエッセイ9/27更新分を読んで…まあ僕の人生において、僕なんかは自分の中にもう抜き難く存在しているのが「実存主語的」文学観であり美術観であるなあと思う。っていうとものすごく偉そうだ。全然…

「父ありき」

僕はやはりこの手の物語には弱い。話の流れに激しく感情を揺さぶられて映画それ自体を突き放してどうこう考える事ができない…。まあある意味、幸せな体質なのであろう。しかし小津映画にしか無い不思議な緊張感というのがあって本作にもそれが横溢しているの…