日記

「ドリュウ・ラ・ロシェル日記」を読み始めたら、そのまま、だらだらと、いつまでも読み終われなくなる。日記というのは、読んでいると、誰であろうが、きりがないものだ。時代的にはかぶるところもある永井荷風の断腸亭日乗もそうで、どこからどこまで読む…

足立48

ドアの空く音がして、店主がそちらを向いて、よお、と声をかける。入ってきたのは若い男二人だ。めずらしいと思った。若い人はあまり来ない店だと思っていた。座っている自分の後ろを通り過ぎるとき、少し僕の背中に当たって、僕が少し椅子を前に引く。一人…

ランチタイムのときに座ってるのはファミレスみたいな四人掛けの席で、最近だと壁際シート席に僕とゲーマー女子が、向かいの席にU君とM君が座る。U君とM君はどちらも自分が食べ終わるとさっさと席を立ってしまうので、残されるのはいつも壁際に並んで座った…

Identity V (Reprise)

「昨日の夜、こんなことがあってさ。」とか「今日の空、秋晴れって感じで最高じゃない?」などと話しかけても、まるでつれない態度で「ええ」「あ、はい。」「そうですねー」とか…そんな一言二言しか返ってこなくて、でもまあ、それはそれでかまわない、ラン…

Identity V (Short)

子供が小さな手で、ゲームアプリを起動してメニューボタンを叩くように連打してゲームをスタートさせるときの早さと手さばきの鮮やかさ。君はきっと今、何を措いてもまっさきにそれをしたいから、あらかじめ身体が、それをするために最適化されてしまってる…

ここで

Fさんの日記を読んだら、彼と彼の友人のバンドメンバーが我が住まいの最寄り駅周辺で丸一日音楽活動をして夕食して帰宅されるまでの様子が書かれていた。駅を降り立って待ち合わせたメンバーが揃って、ああ、あの本屋だなとか、歩いているのはあの通りだとか…

中間地帯

水泳を終えて、西口に向かってうす暗く汚れた横浜五番街商店街を歩いてると、駅に直結したデパートの仕事を終えて、五番街の端を通って、おそらく従業員詰所のような場所へ向かって歩いていくのだろう女性たちを、よく見かける。皆きちんとした制服を着て髪…

加賀

来月旅行予定の金沢について少しは知っておくべきかと思って、図書館で借りてきた本を適当に読んでいて、加賀百万石の礎を築いた前田家についてだとか信長とか秀吉とか家康とか、ひたすら戦にあけくれるばかりだった時代のことを、あらためて思うに、これは…

甲州

錦糸町から7:08のあずさ3号に乗る。朝早過ぎでしょと船橋から乗ってきた隣席のKさんに言う。Kさんは超朝方タイプの人なので、平日も会社に着くのは朝七時半くらいだとか。今日のスケジュールも彼女のプランによるもの。会社行くより早起きして、これから酒を…

手振り

初対面のあなたは、まだ静止画のようなものだ、それが数日経って、緊張がほぐれてくると、表情はやわらかくほころんできて、仕草のバリエーションが増えてくる。話をしながら、顔を向けて、視線をさまよわせ、次の言葉を捜し、身体を揺すり、動かして、相手…

五十

ビールの小瓶を傾けて薄張りの小ぶりなグラスに注ぐとき、瓶を水平にしてグラスの淵にぎりぎり付かない程度の位置に止めて、注がれる液体がグラスのなかで泡へと変わる様子を見ながら、均一のペースでゆっくり注ごうとするのだが、小瓶程度の重さを片手で支…

おまかせ

L字型のカウンターで二席と六席、僕は短い方の二席側に一人で座っていて、角を挟んだ隣の二席に男女、真ん中を空けて、奥の二席には常連っぽい年配の男とそれより若い女。店に入ったときは、先客全部同伴か…と思ったけど、その後の雰囲気から見てどちらもそ…

アルビニ

水泳時に着用するウォークマンがまた壊れた。でも前みたいに、数日すればまた復活するんじゃないだろうかと期待をかけて放置しておく。壊れたやつは二代目で、初代はまだ生きているので明日以降はとりあえずそちらを利用する。 ビートルズのリマスターされた…

花束

先週送別会した人の、今日が出勤最終日なので、僕は周囲から「明日からずいぶん寂しくなるんじゃない?」とか言われた(妻からも言われた!)のだが、まあ、そう思われるくらいには仲良しに見えたということだろうか。「だって、あんなに笑ってる坂中さん、は…

節子

昼夜むしあつく、もう九月も終わりだというのに、こんなことでいいのかと思うが、空の雲だけはすっかり秋だ。 原節子の「美」は僕の中ではグレタ・ガルボを凌いでますね。彼女を撮ったどの監督も彼女の比類のない美しさを認めています。関係ないけど、僕は自…

アビイ・ロード

ビートルズの"アビイ・ロード"が、最近リマスタリングされたらしい。"アビイ・ロード"をはじめて聴いたのは中学生のときだ。 悲しみは、"アビイ・ロード"である。音楽に、始めがあって終わりがあるということの、どうしようもなさ。 このアルバムがジャンル…

送別

夏の余韻というか、秋のはじまりというか、なにしろテラス席が快適な夜だった。なによりだったと思いますよ。 東京の人はやっぱり冷たいかね?歩いていてちょっとつまずいたとき、あ!って思って、わ!はずかしい!と思って、ちょっとふりかえると、東京の人…

テレビって、音を消して見ているときの方が面白いと思う、喋ってることは、どうせくだらない、しょうもないじゃん。でも音を消せば、とりあえずキレイな男女や誰かが喋ってるわけだし、そういう映像を見てるだけなら、べつにいいじゃん。 さいきんのテレビっ…

雅歌

セルジオ・レオーネの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」で、主人公のデニーロがディナーの後でかつての恋人(?)に聖書の雅歌を読むシーンがある。引かれたのは第一章の後半。雅歌はこちらに口語訳がある。 https://ja.wikisource.org/wiki/%E9…

幻化

旅行先で酒や食事をするなら、現地の店に行って現地の人の話を聞いたりできれば良いとか、そういう場面の出てくる小説を読むと思うのだが、でもよく考えてみるとそんなこと実際にはあまり無いことで、現地の店にいきなり行ったからって、すぐに他客や店の人…

食事

昨日の夕食はちょっと天ぷらして、蕎麦を食べて…というプランを立てたのだが、結局天ぷらをいくらも食べないうちに満腹してしまってあっという間に食事終了、残った具と蕎麦はそのまま今日の夕食まで持ち越しとなって、今日も天ぷら、そして蕎麦、ゴールまで…

真夏の夜のジャズと梅崎春夫

youtubeに全編あがっていた「真夏の夜のジャズ」を観る。1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルの様子。みんな、お金持ちで、素敵な服装に身を包んで、ゆったり腰掛けて、ヨットの行く先をぼーっと見つめて、ステージの演者をぼけーっと観て、拍手し…

母と子

たとえば女性が出産するのに限界と云われる年齢があって、ある女性がその年齢を越える前に子供をもつという決断をしたとして、そのときはきっと結婚とか家庭よりも子供をもつことが最優先なんだろうけど、そう思う気持ちはわかるしそれでかまわないと思う。…

Jさん

地元の店に行ったら、たまに会うJさんがいた。相当酔っていて、いつものように他愛のないどうでもいいしょううもない話をだらだらしながら二合くらい呑んで、Jさんがそのうち足元もおぼつかないくらいになってきて、ねえ、この後もう一軒行こうよ行こうよと…

変わる

内輪での送別会のために、六月に内輪での歓迎会をやったときと同じメンバーが集まった。 君が四月に、初めてこの現場に来たとき、僕がフロアを案内して契約だの規約書類だのを読んでもらって、この後もしよければランチを一緒にどう?と誘って、君も僕や他の…

梅崎春生

梅崎春生「風宴」と「桜島」を読む。さまざまな日本の文学、ことに戦後~80年代くらいまでの小説に出てくる男性の主人公を、作者や作品が何であれ、いつも同一人物ではないかと思うことがある。出来事を見つめるときの態度とかまなざしとか表情とかの、自分…

Vitamin C

七時を過ぎて会社を出ると、夜の闇はすっかり深くて、身を少し硬くしたくなるような涼しさがあって、この季節になるともはや暗さが暗いだけでなくて寂寞感だとか絶望感だとか不安感だとかが闇に深々と溶け込んでいるようで、歩いているだけで気が塞がり沈鬱…

哲学

RYOZAN PARK巣鴨の樫村晴香トークへ。話が始まって一分もしたらほとんど金縛りにあったのと変わらない、根源的で本来的な言葉がめまぐるしくつむがれていくのを聴いてるだけで、二時間半のトークだったが最初から許容量限界のレッドランプが点きっぱなしの状…

パリで一緒に

「パリで一緒に」(リチャード・クワイン)を観る。この映画撮影時のオードリー・ヘプバーンは33~4歳、ウィリアム・ホールデンは44~5歳らしい。恋愛コメディの体裁で、二人の掛け合い漫才じみたやり取りが楽しいということなのだろうけど、全体的にちょっと…

健康

健康診断というのは、診断の時間よりも待ってる時間の方が長いものなので、その間は読書になるわけで、本日は橋本治「美男へのレッスン」を読んでいた。この本、埼玉の実家にあるんだけど、久々に読みたくなって電子で買ってしまった。しかし橋本治は膨大な…