京成線の堀切菖蒲園駅のプラットホームのベンチは、よく見かけるような線路側を向いた横並びではなくて、電車のボックス席のように向かい合って設置されている。 だから反対側のホームに立って見えるのは、向かい合ったり背中合わせで座っている人々の姿と、…

blu-rayで、アルノー・デプレシャン「二十歳の死」(1991年)を観る。フルートの不穏な旋律とともに、映画がはじまる。サスペンス的、ノワール的な雰囲気。この曲がかなり効果的だ。窓際に逆光気味で佇む男の手にするグラスが光を反射している。しかしこのあと…

漬物で何が好きか?と言われたら、どう答えるか。ありきたりだけど、白菜とか胡瓜の浅漬けになる。他にも色々あるとは思うが、あるときふいに漬物が食べたいなと思ったとして、何を選ぶかと言えば、それに尽きると思う。 買うのはスーパーに売ってる普通のや…

「飾りじゃないのよ涙は」の歌詞の登場人物は泣いたことがなくて、刹那的な日常で胸のうちに波風が立つこともなくて、でも誰かがことあるごとに安っぽく感情を溢れさせることを、何か「違うと感じる」し「飾りじゃないのよ」と言いたいくらいには、涙という…

一昨日【古谷利裕 連続講座 第2回 「虚の透明性/実の透明性」を魔改造する】アーカイブを視聴した。以下内容をもとに自分なりに考えたこと。 「虚の透明性」の多彩なバリエーションというか、さまざまな事例が示され、ジャンルとしては主に建築または絵画で…

ハーマン的「魅惑」とは、たとえば道具が壊れたときに、それまでの「感覚的性質(SQ)」のバリエーションが失われて、背後にある「実在的対象(RO)」が予感されたときのようなことを言うのだと。 たとえば「ろうそくは教師のようだ」という隠喩がある。この文の…

昨日は乃木坂でマティス展を観てから、RYOZAN PARK 巣鴨で大岩雄典トークを聴講した。そして今朝はようやく古谷利裕 第2回「「虚の透明性/実の透明性」を魔改造する」をアーカイブで見ることができた。順次書いていきたいが、まずは昨夜のイベントについて。…

めずらしく予定がぎっしりだ。午前中は診察といつもながら効果あるのか微妙なリハビリ。それが終わったら乃木坂へ行って国立新美術館で「マティス 自由なフォルム」を見て、14時から同館3階講堂で対談:岡﨑乾二郎×米田尚輝「アネムネーシス(想い起す)のマ…

朝の電車内で、そこかしこから人の話し声が聴こえてくるようになると、春が来たんだなと思うところがある。 冬の間、車内は水を打ったように静かなものなのだ。 誰かがほんの少しでもささやき合おうものなら、その声は端から端にまで響き渡るほどの静けさだ…

ふだん平日の日中は建物の中でずっと仕事してるので、たまに所用で外出したとき、日中のそんな時間に外を歩いている人たちを見て、これだけたくさんの、自分とはまったく異質な、別の仕事、別の用事、別の役割、別の目的、別の論理で生きている人たちが、外…

学校のような場所で講話するという機会があった。もともと僕は仕事上、任意の誰かに話をしたり説明したりする機会はそこそこ多くて、面談などもこれまでのべ軽く百人以上はやってるはずだけど、そこそこ大人数の前で合計二時間弱も話をするというのはたぶん…

夢を見ながらうなされたり、ときには叫んだりすることもある。そういうとき、隣で寝ている妻に起こされる。どんなに恐ろしい夢を見ているのかと思うほどの声を出すらしい。明け方に騒がしくして申し訳ないと思う。 叫ぶ場合は、たしかに怖い夢を見ていること…

あきらかに、老人と見なされねばならぬ年恰好の男性二人が、電車内で熱っぽく語り合ってる。何かと思ったら「洋楽」の話だ。往年の有名バンドやミュージシャンの固有名詞が、次から次へ飛び出してきて、あの曲のここが良いだの、あの曲は最高だの、留まると…

それにしても今日は、お花見にうってつけの日だったようで、家を出てから、いつもはほぼ無人な近所の公園へ差し掛かると、敷地一面がたくさんのピクニックシートやテントに埋め尽くされていて、まだ正午前にもかかわらず、たくさんの人々が賑やかに飲んで騒…

VHSで、アルノー・デプレシャン「そして僕は恋をする」(1996年)を観る。はじめて観たと思っていたけど、そんなことなかった。登場人物たちが次々と出てくる序盤で、うわ、これか!!と思った。始まるやいなや、何十年も封印されていた箱の蓋を、間違えて開け…

VHSでマイケル・チミノ「サンダーボルト」(1974年)を観る。面白かった。マイケル・チミノ初監督作で脚本も同じ。娯楽作として人を面白がらせる技が、じつに冴えてる感じ。クライマックスである銀行襲撃までの、ダラダラのんびりした感じが、ちょっと「勝手に…

うろおぼえだけど、松本零士の戦場まんがシリーズ作品のどれかにあった台詞。「飛行兵はいいなあ、座って戦争ができるんだから」 飛行機の座席に座ってられる飛行兵とちがって、歩兵は自らの足でひたすら行軍するのだから、言いたいことはわかる。でもおそら…

身体の特定部位とか衣類とか持ち物に、強い性的執着をおぼえるのがフェティシズムであるとして、そういう性的感覚は自分にもわかるつもりだが、その執着心が、じっさいにそのものに触れても消えないというのが理解できない、とまでは言わないけど、幻想とは…

月曜夜に来た業者は、うちの風呂の蛇口を一目見るなり「あ、部品がちがう」と言って五分で撤収した。仕方ないので管理会社経由で別業者に来てもらうことになったのだが、事前にメールで送信した蛇口部分の写真画像に対する担当者の返信が「いくつか部品を持…

ある時代の、東京に縁の深いおじさんたちは、永井荷風が好きである。ちなみに江藤淳と小林信彦はともに1932年生まれ、永井荷風は1879年生だから当然ながら両者とはまるで同時代ではなく、二人は荷風の見た景色をそのまま見たわけではない。にもかかわらず、…

風呂の蛇口が壊れて栓がきちんと締まらず、お湯が止まらなくなった。温泉かけ流し状態である。水が出ないのは困るが、止まらないのも同じくらい困る。仕方がないので、外の元栓を締めたら止まった。 これだともちろん、家のなかの全ての水供給が止まったまま…

整形外科で診察とリハビリ。順調に快復している、とのこと。同じ薬が、さらに二週間分処方され、経過観察となる。 久々の店で、イタリア野菜惣菜盛り合わせ、芽キャベツのローストに牡蠣ソース、茹でジャガイモにホタルイカソース、そして生桜海老のパスタ。…

DVDで豊田四郎「駅前旅館」(1958年)を観る。かつては上野にも、おそらくはその他の都内の多くの都市にも地方にも、今とは比較にならないほど多くの旅館があり、番頭が駅前や店先で客の呼び込みをし、周辺の同業者や商人や、怪しげなチンピラまがいの客引きら…

グリフィス「東への道」のクライマックスの流氷場面。氷に伏せている、哀れで美しいリリアン・ギッシュ、冷たい氷の上に身体を横たえて、髪や腕が水に浸かっていて、おそらくその体温も気力も、冷たい川へみるみるうちに吸い取られているのではないか。瀕死…

僕はもちろんカラオケは好きではなくて、なぜかと言うと歌うことが楽しくない、自分に自分の歌う声が聴こえてくるのを、楽しむことができない、だから自分自身はまったく歌わないし、お前も歌えと言われて一々拒否するのも面倒くさいし、カラオケ店内は狭く…

自分の運転する車が、たくさんの車と一緒に、コース上を走っている。 長いストレートコースを、かなりの高速で走っているのだが、他車もほぼ同じ速度で走っているので、お互いの位置関係はかすかにしか変動しない。まるで全車が静止しているような、凪いだ海…

毎朝、髭を剃るときに、首と肩の痛みに耐えねばならない。なぜ髭剃りすると痛むのか不思議に思ったのだけど、鏡の前で顎下を見るため上を向くときに痛むのだ。これまで無意識にやってきた動きなので、痛む理由がわからなかったのだけど、頭を後ろに反らすか…

予約していた時間に美容院へ向かう。神経痛を患った件を話したら、去年同じ症状を経験したと美容師のTさんが言う。そうなの、Tさんも背が高いからね、と言うと、はい私、姿勢悪いんです…と返され、いや、そうは言ってないが、まあ、たしかに僕も猫背で、姿勢…

自宅から徒歩数分のところにある整形外科を訪れる。数年前に開業したらしい、まだ新しい建物の入口をのぞくと、朝九時だというのに待合室には座る隙間もないほどたくさんの人が。受付のスタッフらは忙しさで殺気立った雰囲気である。前の通りは歩行者もまば…

起きたら首回りに激痛、上体を起こすのにしばらく難儀する。起きてしまえば首回りの痛みは液体のように上腕部へ移る。ただ昨日までの、肩から二の腕にあったはずの痛みが、その裏側へ回って、今は肘の少し上あたりに痛みの中心がある。患部が安定しないので…