2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「ポニョはこうして生まれた。 〜宮崎駿の思考過程〜」のDVD一枚目から二枚目にかけて見直していた。 宮崎駿の貧乏ゆすりは、じつに見苦しいけど、ああやって貧乏ゆすりしまくって仕事してる様子を見てると、この人物は当分元気なまま、この先もひたすら精力…

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230728/k10014144961000.html4万年の眠りから覚醒 シベリア永久凍土の線虫 再び動き出す 線虫が四万年を経て蘇生したらしい。作用/反作用運動の有無が、物質/生命の違いだとするなら、四万年の時を経て、ふたたびそれが…

アンドレイ・タルコフスキー「サクリファイス」(1986年)を観る。僕がかつて、はじめて観たタルコフスキーが本作だが、でもこの映画を必ずしも大好きだったわけではなくて、一度観ただけで今や記憶もおぼろという状態なのに、久々に観たこの映画の示す美的と…

映画を観終わって、そこそこ充足してるときの、あのダラーっとした、ただ受け身一方の、どこまでもだらしなく、図々しい態度でその場にふんぞり返ったままでいたい気分。このままもう二本でも三本でも、タイトルはさしあたりなんでもいいので、始まりも終り…

帰りの電車のなかで、前にいた人のTシャツのプリントが蛙だった。蛙が壁をよじ登ろうとして、身体をねじり両手両足を交互に伸ばす姿だ。 子どもの頃、蛙の肢体には惹かれるものがあった、それをたくさん絵に描いたりしたのを思い出した。毛や触覚のない艶の…

人は、暑くても寒くても死んでしまうけど、やはり人を少しずつ衰弱させるのは寒さの方だろうと、これまではなんとなく思ってきた。寝たきりの老人が、こときれるとしたらそれは冬だろうし、もし春をむかえたなら、その生命はもう一年の猶予を得たものと、深…

子供の頃に、やたらと派手な電飾器具やギヤボックスの付いた子供用自転車が流行ったのだが、80年代あたりなら子供に限らずあの「光物」への憧れは誰もがかかえていたので、オーディオ装置のグラフィックイコライザーとか、自動車の速度表示と回転数表示とか…

先日、人が駅の改札を歩き去っていくのをぼんやり眺めながら考えてたのは、仕事とはつまり定点観測のことかもしれなくて、多くの人々と同じようにどこかへ行ってしまわず、流れのままに消え去ってしまわず、なぜか単独で、その場所に留まってる役割のことで…

宮崎駿「崖の上のポニョ」(2008年)を、冒頭だけ少し見るつもりが、結局最後まで観てしまった。宗助が自宅から海辺までの下り坂を駆け下りてくる場面からもはやすごい。 そして津波の場面のすさまじさ。歓びだの悲しみだの恐怖だのに区分けすることの出来ない…

MOVIX亀有で宮﨑駿「君たちはどう生きるか」(2023年)を観た。そのように感じる人は多いだろうけど、巨匠が晩年に手掛けた作品という感じだった。とにかくはたぶんこれで良いのだ、という感想を最後にもってしまう点においても、まさにそういう感じだった。 …

吊革に掴まっている自分の視点から見下ろす、座ってる人たちのスマホの光。遠くにも近くにも浮かぶ、縦長の画面。 それらの画面の色と動き。手前の女性は茶色で、前方の男性は青い。真ん中辺を押さえると、何かが出る。女性の場合は、素早く決まったパターン…

昔聴いた音楽だけは今でも聴ける、と思うことがある。常にそんな狭量さではつまらないが、ひとまず昔に聴いた音楽をあらためて丁寧に聴き返すことで、音楽を受け取る側である自分の設定を見直せるところはある。これとこれとこの要素が、今でも自分の嗜好の…

アイドルグループのメンバーFが駅前の広場にいるのを見かけた。そんなグループの存在を知ってる人なんて世間にはほとんどいない。しかし少数ながらファンは存在する。自分もその一人だ。 メンバーのなかでもとりわけ「変キャラ」な、いわば通受けするタイプ…

改札口の脇で待ち合わせしていた。あと五分で着くとのメールを受信してからすでに十分以上経過していた。 改札を通り抜ける人々をぼんやりと眺めながら、これは見たことのないイメージだと思った。 老若男女という言葉があるけど、それがつまり無条件な、何…

Amazon Primeで、マチュー・アマルリック「彼女のいない部屋」(2021年)を観た。思ったほど驚かなかった。それは去年一度観ていて、どういう映画なのか知っているからで、知っているからこそよけいに面白いのではないかと期待しての再見だったのだが、意外に…

Amazon Primeで、佐向大「夜を走る」(2021年)を観た。高架下の車道を走る業務用自動車。薄暗い車内。ハンドルにかけた腕がゆっくりと動き、その腕にかかる力で、車の走行が制御されているのが感じられる。斜め後ろからとらえられた運転手の横顔、その視線の…

アーティゾン美術館の「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開」これは素晴らしい展覧会だった。所蔵作以外のはじめて観るような作品も多数あって、とにかく点数が多くて見応え充分である。アンドレ・ドランにしろ、ヴラマンクにしろ、レジェにしろ、どれも佳品…

ビルが解体されて丸ごと無くなると、周囲にあるビルのこれまで見えなかった壁が露出する。 まるで日焼けしてない素肌のような、掃除も整理もまるでやったことない部屋みたいな、そんな「内側」が、いきなり衆目の元へ晒されてしまっている。 元々のビルが無…

まことに無根拠な、僕の勝手で浅はかな思い込みに過ぎないけど、2011年の東北の震災以後、僕は水死で絶命することへの恐怖が薄くなったと思っている。薄くなったというより、あれだけ大勢の人々が水死したことを思うたびに、水死とは、きっとこれまで自分が…

活け締め

釣り人たちが釣った魚を新鮮なまま持ち帰るために「活け締め」をやってる様子を、動画で見ていた。生きている魚たちの「殺され方」を見ているのは、なかなかキツイものがある。胸の鼓動が早くなり、ため息が連続して漏れる。 「活け締め」について紹介された…

つゆ

僕は市販の蕎麦つゆが好きではなくて、なにしろ市販のつゆはどれも甘すぎるのだけど、これなら美味しいと思える蕎麦つゆを、もし自分で一から作るなら、それはそれなりに手間をかけないわけには行かないはず。 蕎麦の味をどうのこうの言うほどの知見もないけ…

卑怯

昨日、ブルース・リーや宮本武蔵の話が出てきて、それで坂口安吾が「青春論」に書いた宮本武蔵のいくつかの逸話を若い頃読んだのを思い出した。 「卑怯者」を蔑み、軽蔑したい心があるとして、しかしなにしろ「負けたら死ぬ」という条件下で生きる剣術者が、…

作者

「保坂和志 小説的思考塾 vol.12 対話篇 + 山下澄人」会場のRYOZAN PARK巣鴨へ。 人として、さっぱりと気持ち良くて、まっすぐな感じ。すぐれた作り手、作者とは、たいてい皆そうだ。 作品を体験するとは、イメージを見るというよりも、作者という物質(身体)…

小説家の映画

ヒューマントラストシネマ有楽町で、ホン・サンス「小説家の映画」(2022年)を観た。前回観た「あなたの顔の前に」のイ・ヘヨンが、今回も出演している。冒頭で彼女の姿をみとめて、まず胸の内側で波立つものがある。前に観た映画の主演俳優が、今観ている映…

惑星ソラリス

DVDでアンドレイ・タルコフスキー「惑星ソラリス」(1972年)を最後まで観た。その人は現実的存在ではなくて、皆に共有された幻想なのだから、たとえばためしに解剖してみれば良いのだとか言われて、さすがに俺の妻に何てことを…と反発もするけど、でもその妻…

低温調理

先月入手した低温調理器は、まだ牛もも肉を調理するために一回使っただけ。 容器内のお湯を任意の温度に保ち、袋内の食物を数時間のあいだ沈めてじっくりと加熱する。べつに根気さえあればふつうのガス台で鍋に火をかけて水温計見ながらこまめにガスの火加減…

男子

痩せていて身体も小さいから、高校生ではなくたぶん中学生かと思うが、毎朝駅に向かってかったるそうに歩いてるあいつらの、あのダラダラとした歩き方、身体の倍近くもありそうな鞄を肩からぶらさげて、まるで酔っ払いのようにふらふらと、むしろあんな歩き…

並ぶ

駅から免許試験場までの道。青いワンピースの女性が数メートル先を歩いている。建物入口に近づくと、ぎょっとするほど長い行列が出来ていて、案内係が大声で人を案内している。何度も蛇行する行列の最後尾に女性が並ぶ。かんべんしてくれうんざりだよとでも…

大豆田とわ子とソラリス

昨晩タルコフスキーの「惑星ソラリス」を観ていた。主人公が宇宙ステーションに到着するが、ふたりの科学者は明らかに様子が変で、しかも船内の様々な場所で、若い女や子供のような人物の姿を見かける。 それは幽霊でもなく幻覚でもなく、ソラリスの力によっ…

同時代

「プリンスのようなすぐれたミュージシャンの作品を同時代で聴き続けることが出来るのは幸福なことだ」と、大昔ある音楽評論家が語っていたけど、それはすぐれた作品のリリースを即時追えることが単に私だけの体験でなくて、この現在の世の中という緊張感の…