2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧
昭和二十年から三十年代までの同人誌を調べたら、おそらくおびただしい数の誌名が出てきて、おどろくほど著名な作家がそれらに参加しているのを確認することもできるだろう。文芸における同人誌とか、美術における公募団体とか、戦後における団体化の運動は…
ギターの弦を買った。たぶん、九十年代に買って以来だ。弦のないギターがずっと部屋にあって、このギターを買ったのはたしか十九歳のときだから三十年以上前で、その後学生時代を終えてしばらく実家にいたり、その後結婚したり、引っ越したり、いろいろな局…
駅前は午後九時にもなると、どの店も軒並み閉店して深夜のごとく真っ暗になっているのだが、少し歩いて大きな通りに差し掛かったあたりで、何やらものすごい喧噪が聴こえてきて、それはまるで、この近くに小さなコンサート会場か野球のナイター戦が開催され…
JRの駅の構内に、吉永小百合のポスターが貼ってあるのをよく見かける。その図像を見つめていると、きっと今や、吉永小百合というのは、人間であると同時に、すでに菩薩とか観音様みたいなものとして受け入れられているイメージなのだろうな…と思う。誰もがそ…
Apple Watchを入手した理由は、水泳距離と睡眠時間をロギングしたいためで、これまでMISFIT RayでやっていたことをすべてApple Watchに移管するつもりだ。MISFIT Rayは三年以上、大きな問題もなく使えていたが、さすがに最近挙動が不安定なことも多く、どう…
僕の20日と21日の文章をもとに、三宅さんが自作について丁寧に語ってくれていて、三宅さんの緻密極まりない分析が、自分の感じた疑問や不明に対して、見事なガイドの方向性を与えてくれた感じだ。(「異なる人種の顔だちを見馴れていないまなざしにとっては」…
Amazon Primeでダニエル・ロアー「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」(2019年)を観る。この「物語」がロビー・ロバートソン史観によるザ・バンドの歴史にほかならない、という部分はひとまずおく。ロビー・ロバートソン自身がはじめてギターを手にし、バン…
小説の感想を書くというのは難しい、と言えば、それはそうには違いないが、その感想というやつを、書きたいように書くのが難しいというか、そもそも感想と称して、何が書きたいのかのフィードバックに見舞われながら、出したものが入ってきて混ざり合った曖…
歌いながら弾くベーシストは、あれはすごいことだと思う。ギターとかピアノみたいな伴奏的な楽器なら、楽器の演奏と歌う行為とが、あまり干渉しないような気がするけど、ベースという楽器は単音指弾きで、ある一定の集中力を維持しなければ継続不可能な演奏…
三宅誰男「双生」について。思い出しながら書き出してみる。 出征時に偶然出会う旧友との場面。ここで「兄」が登場するのかと、まずはじめに思うが、そうではない。しかし読む者がここで「兄」を思い起こすことはたしかだ。しかも「彼」と旧友が並ぶと「瓜ふ…
三宅誰男「双生」を読了した。とても良い作品だったので、読み終わって非常に嬉しくて、本を置いた後もまだ活発にこころの中で動くものを抑えながらその余韻を味わっていた。 二週間くらいかけて読んだことになるが、但しその間、終始肯定感だけで読んでいた…
ヒューマントラストシネマ有楽町で、ホン・サンス「逃げた女」(2020年)を観た。久々のホン・サンスで、感覚をホン・サンスの周波数に調整…という感じ。 登場人物の食事する様子、喫煙する様子、対話の内容、ひとりになったときの仕草など、画面に映っている…
夜の七時半頃だったか、駅へと向かう人混みのなか、中年男性と小学生くらいの男の子が並んで歩いていた。男性は背も高いが腹回りなどの贅肉も相当なもので、巨大なビア樽をやや細長くしたものが、危なっかしい足取りでゆらゆらと歩いているような感じ。僕よ…
有給取得予定だったのを、前日の今日になってやむなくキャンセルした。有給の事前キャンセルが、自分は多すぎる。休みの予定を合わせた妻はいい迷惑であろう。これで妻は白紙になった予定とともに一人休暇の翌朝をむかえることになるわけで、まことに申し訳…
あと一週間で、四十代が終わる。死んだ方がマシだ、そこまでは言わないが、何かとりかえしのつかない、行き着くところまで行き着いてしまったかのような、しかしそこに手ごたえも自覚もさっぱりともなっていないような、このいらだたしいほどに馴染んだいつ…
先日の、保坂和志の小説的思考塾Vol.4の配信は17:00からだったが、ちょっと早めにアクセスするとすでにトークがはじまっていて、それはここ最近の、いつもの通りのパターンである。 遅れて始まることはあっても、予定よりも早く始まるトークイベントというの…
「約束と違うじゃないか!」との言葉に対して、「あーそうですね…すいません」とこたえるのは、自分は若いときは、たまにやっていた。相手と交わした約束とか、相手が大事に思ってそうなこととか、そういうのを無視したり踏みつけたりしたこともあった。露悪…
保坂和志の「小説的思考塾 vol.4」の配信を観る。それに先立って配布された資料の3「人間と犬は除いて」アガンベンによるドゥルーズ追悼文がとても印象的だった。以下に引用。 「人間と犬は除いて」アガンベンによるドゥルーズ追悼文 彼(ドゥルーズ)はこの…
三浦哲哉「LAフード・ダイアリー」は会社のお昼休みの時間などに、少しずつ読んでいて、まだ半分とちょっとだが相変わらずのいい感じ。料理研究家とは単なるお料理の先生ではなくて、著作を通して食生活やライフスタイル、つまり生きかたやものの考え方を読…
レストランで牛肉の下に大量のフライドポテトが添えてある皿、あれが出てくるといつも大変な思いをする。残したくはないが、食べきったら腹がやぶれるかも…といった苦しみに苛まれながら皿に向かうことになる。家で牛肉を食べるなら付け合わせるのは葉物野菜…
墨汁の香りは、昔から好きだった。子供のころ、僕は字を書くのが昔から上手くなくて、硬筆でも毛筆でも苦手だったのだが、しかし毛筆だけは、硯に墨を入れて準備をするあの儀式めいた感じだけは好きだった。墨を磨ったことなんて一度もなく、毎回墨汁を使う…
あまりちゃんと見てるわけでもなく再生していたAmazon Prime「ブルーノート・レコード ジャズを超えて」で、ブルーノート・レコード創設者であるアルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフはともにドイツ出身で、30年代にナチス政権下をのがれてニューヨー…
テレビドラマを観ながら、うちの奥さんだって当然ながら、僕と結婚していない人生もありえただろうなあ…などと思った。僕と結婚してない、つまり他の男性の妻である可能性。あるいは独身である可能性。あるいは…色々なさまざまな可能性、があったはず。 自分…
毎朝7時に家を出て駅まで歩く。電車の出発時刻は7時15分で、駅の改札を通り抜けるときにスマホの時計表示がまだ7時14分で秒針の動きが後半に差し掛かる手前あたりなら間に合うが、まもなく15分になろうとしていたら無理なので次の電車に乗る。もう1分早く家…
妹から大量に枝豆が届く。鍋一杯の枝豆を茹でて、ビールと供する。 鈴木清順「カポネ大いに泣く」(1985年)を観る。田中裕子は、八十年代を象徴する…とあらためて感じた。着物姿がとてもきれい。しかし戦前から戦後にかけて、死んでしまうことは不幸だとも幸…
文京区白山のwalls tokyoで井上実展。この絵がある意味、小さな虫が広い画面上をでたらめに歩き回って、その足跡がそのまま絵になったようなものだったとして、、そのとき、描いた主体は小さな虫だということになるけど、虫は、そのような絵を描く意図はなか…
「Black Hole Sun」という曲で自分が以前から知っていたのは、イギリスのハウス系ミュージシャンCharles Websterがまとめた3枚組のコンピレーションに収録されていたものでLea Delariaという人が歌っているやつだ。たぶん十年くらいに買ったCDで、けっこうよ…
酢の加減を、ひとまずこれで良いと思えるくらいまで、できるだけ調整してみたい。お汁でも、酢の物でも、このくらいが自分にとっていちばん美味しい、そう思えるベストな按配を知っていたい。しかし、これがベストと思える自分のストライクポイント自体が、…
大江健三郎の作品に出てくる登場人物たちの性的嗜好のアブノーマルさというか、オーセンティックとはいえない、かなりの振れ幅をもつ事例の多さとはなにか。「蔓延元年のフットボール」冒頭で、全裸で顔を赤く塗り胡瓜を肛門に挿した状態で縊死する主人公友…
横浜駅の南と中央の改札を結ぶ通路の一画に、ベンチが置かれたスペースがあり、そこにピアノが設置されていて、通り掛かると大体いつも誰かがピアノを弾いている。弾く人も聴く人もたまたまそこにいただけの人々だろうけど、弾く人はみんなけっこう上手にピ…