アルバム「霧の5次元」のザ・バーズザ・バーズは初期から一貫して、ロジャー・マッギンの12弦リッケンバッカーの音があまりにも特徴的なので、これが有る無しで聴こえてくる楽曲が、ザ・バーズであるか否かが容易に判断できてしまうほどだ。

それはギターというよりもオルガンのようだと思う。鋭く金属質な音色のオルガンが、終始鳴り響いているかのようだ。抑揚はほとんどなく、全体をのっぺりと包んでいて、ただし分厚く膨らんだ一音の幅が細かく強弱を変えながら振動していて、だからそれは最終的に出口のない密室内での、終わらない耳鳴りのようなものに聴こえてくる。

こういう音作りは、今では考えられないようなものだろう。音を分厚くするにしても、異なる音を重ねるにしても、もうちょっとやりようがあるはずだ。未整理でバランスが悪くて乱暴だ。しかしそれでこそザ・バーズというか、それこそが時代なのだろう。使い回される前、細部の調整前、洗練される前だからこそ、要素がぶつかり合ったまま、そのままで完了にできる。

同じような時代的感触は、90年代にもあったのかなと思う(異様に荒々しいループとか…)。未開の領域に手探りで分け入っていく感じ。それは後から振り返ってみても、滑稽や未熟や思慮浅さには思われない。時代が移り変わっても、未開の領域を目指した蛮勇のカッコよさの感触は消えないのだ。