2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧
y=x2乗のグラフ(放物線)に対して、Xの変化にかかる時間あたりのyの移動距離を計算するとき、掛かった時間をかぎりなく0に近づけたときの値(瞬間の変化率)が微分である。そのとき、座標や曲線は実在し、目に見えるが、変化(ベクトル)はそうではない。微分とは…
「はだかのゆめ」監督の甫木元空がボーカルとギターをつとめるバンド「Bialystocks」。なかなかいい感じだ。 Bialystocks - 灯台【Music Video】https://www.youtube.com/watch?v=6lktU0Ij3-E Bialystocks - Upon You【Music Video】https://www.youtube.com…
シモキタ-エキマエ-シネマK2で甫木元空「はだかのゆめ」(2022年)を観る。 幽霊的な存在と幽霊ではない存在との見分け難さ。また各登場人物の何かへの執着あるいは未執着の濃淡。その力の加わり具合が、人間と景色の堺なく混ざり合っているような、ただそこに…
27日に開催された、郡司ペギオ幸夫×保坂和志イベント&オンラインの配信映像を見る。大変面白かった。 作品の体験者(作者も鑑賞者も)は、自分固有の条件をもって作品にアクセスする。そしてその穴に自分の固有性を注ぎ込んで、その全体を、何かがわかった、…
録画の相米慎二「雪の断章 -情熱-」(1985年)を観た。オープニングでの、雪の積もった屋根を伝って歩くシーンから、お金持ちのお家を去って榎木孝明の家に来て、翌朝になって家政婦と対面して、家を飛び出してそれを榎木孝明が手前から追いかけて、世良公則が…
死んでお棺に横たわってる人の顔を見ると、生前のその人とは人相が変わってる、というか死んだことで、もともとの人相があらわれたと考えたほうが良いか。 その人物が生前に醸し出していた固有の複雑なイメージが失われて、原形質がそのままあらわれていると…
寒い朝、駅前でポケットティッシュを配ってる人、ビラだかチラシかを配ってる人、工事現場の警備で立ってる人たちは、もしかしてこの世で一番辛い仕事をしてるのではないか。 暑さは身体への負荷が高いけど、寒さは心への負荷が高いというか、寒さが身体より…
明らかに今シーズン一番の寒さだった。会社を出たらとんでもなく冷たい風を受けて、身体の輪郭が無理やり際立たせられた感じで、呼吸をくりかえしてるだけで、体温がみるみるうちに外へ逃げてしまいそうだ。 ふと見たら、コートの表面に白い小さなゴミがいっ…
「サタデー・ナイト・フィーバー」でのジョン・トラボルタのダンスは、たとえば同時代のマイケルジャクソンなどとくらべたら、まったく大したことないだろうし、フレッド・アステアのような華麗で完璧でひたすら観る者を魅了するような技量とセンスに満ちて…
サントリー美術館で「京都・智積院の名宝」を観る。等伯って、やはりフレームに対する感覚が新しいというか、そもそも与えられたフレームはすでにイメージを生成してしまっていて、その枠内に絵を描くというのはすでに、その内側へアプローチするだけでは済…
ツイッターのトレンドに"rina sawayama"と名前が出ていて、どんなものだろうかと思って観客がステージ撮影した短い動画をいくつか見てみたら、かなりアツいものがあって良かった。曲にもよるのだが「Bad Friend」とか「Catch Me in the Air」とか、個人的に…
AmazonPrimeでジョン・バダム「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977年)を観る。ビー・ジーズの「ステイン・アライブ」をバックに、ジョン・トラボルタが楽しそう歩いているのは、神田駅を出てすぐの靖国通りの高架下である。それをおそらく秋葉原方面に向か…
何が目的なのか皆目わからないけど、異様にハイテンションであること、それが音楽のもっともまっとうな事態だ。目的がわからないとは、すなわちそれが、意味に結びついてない状態ということだ。音楽は、つまりフレーズは始まりから終わりまで流れるのだけど…
長年使われて、使い古された道具。それなりに手入れは行き届いていて、注入される機械油が芯まで沁み込んでいて、今でも必要最低限の役には立つので、必要十分ではあるけれど、さすがに新品同様とはいかない。新品ならではの滑らかさ、もしくは動きのぎこち…
身体だけが休んでいて、脳が活動中なのがレム睡眠。脳まで休んでいるのがノンレム睡眠。 それならば、いったん目覚めてから一時間ほどして目覚まし音で無理矢理覚醒させられるまでの、あのひとときが何だったのか。それは、iPhoneのアプリが計測してくれるの…
三宅唱の「ケイコ 目を澄ませて」で、プロになって二試合目の試合は辛くもケイコが勝利したのだが、移動時にガードをしないから「余計に何発ももらっている」と会長やコーチから指摘される。それが、試合を撮影した映像で何度もリピート再生される。カクカク…
立川のシネマシティで三宅唱「ケイコ 目を澄ませて」(2022年)を観る。言ってみればありふれた、どこにでもありそうな物語をベースに、何というか、映画そのものが作動して、こうなった。決して突飛な表現手段がとられているわけではない。むしろ古典的という…
1991年の、銀座線で浅草から上野まで、山手線で上野から池袋まで、さらに西武池袋線で所沢方面へと下っていく、その一部始終を、ひたすらビデオ撮影した映像がYoutubeにあって、この乗り継ぎはそれこそ、三十年以上前の自分が毎日のように利用していたルート…
ベースという楽器は、アンサンブルで担う役割として、まずルート音を放つことで、その楽曲が次に進む方向をひとまず指し示す。だからベースは、フレーズをあらわすのではなくて、フレーズを支えるための下地をあらわす仕事を請け負っている。フレーズとはあ…
ジェフ・ベックの何がすごかったのか、 ギターは弦楽器だから、弾いた直後の音がもっとも大きくて、それが減衰していくのがふつうだ。ギターサウンドを聴く誰もが、ギターという楽器のもつ特性を、頭のどこかで理解しており、それを意識した上で聴いている。…
本を読んで、その内容がきわめて抽象的な、論理を精緻に積み重ねていくようなものであるほど、まるで自分ではない誰かの身体を思わせる違和感をともなった何か、誰かの身振りのあとの嗅ぎなれない残り香、行為のあとの室内に満ちた緊張の余韻のような感触を…
非・楽器的、そう言いたくなるような、楽器自体の物質性をあまり感じさせない音楽。 たとえば前近代の西洋音楽なら、原則として楽器演奏のすべてが部分として音楽そのものに奉仕されなければならず、音要素と完成した音楽のあらわすものとの間に、出来るだけ…
真冬になるたびに二時間くらいかけて散歩する道のりがあって、今日はそれを歩いた。毎年ちょうど今くらいの時期に、この道を歩いて、これが一年ぶりかと、毎度思う。前回なかったはずの建物がとつぜん建っていたり、それまであったはずの建物がとつぜん無く…
ユーロスペースの「猫たちのアパートメント」終映後に、伊東順子さん(編集・翻訳業)のトークイベントが用意されていて、そこでの話を自分の考えたことも交えて以下にメモ。 猫がかわいいとか、猫を愛玩動物として飼うとか、少し前まで韓国はそもそも、その…
渋谷・ユーロスペースでチョン・ジェウン「猫たちのアパートメント」(2022年)を観た。 かつては数千か数万世帯が暮らした超巨大集合アパートが、再開発計画によって立ち退きとなり、それにともなって飼われていた百だか二百だかにもおよぶ地域猫たちが置き去…
けが人が乗り物で運ばれていく場面として、自分がすぐに思い浮かべるのは「マッドマックス2」の、瀕死のメル・ギブソンが、いかにも頼りない外観のオート・ジャイロで、仰向けに寝かされて空中を運搬される場面だ。 仰向けに寝ている彼の頭部は、飛行するジ…
ポジティブになれるとか、前向きであるとか、やる気があるとか、自身に関するその類の意識は、つまりいったん無根拠の現状を良しとすることだ。 現状を良しとするとはつまりどういうことか。現状を許容するということではないだろう。無根拠のまま、そのまま…
しかし、それににしても、2023という数字をあらためて見ていると、ふっと気が遠くなる感じがある。 僕が生まれた年を数字であらわすならば、1971であり、それがいま、2023に変わったというのは、やはりすごいことなのだな、と思う。 そのことの驚きを、なぜ…
子供の頃からの記憶に残る、実家から最寄り駅までの道のり。 家を出て、独特のインク臭をあたりにただよわせている印刷屋の脇を通って、米屋の角を曲がって、お墓を通り過ぎて、白い湯気を濛々と立ち昇らせているクリーニング屋の角を曲がって、横断歩道をわ…
新宿武蔵野館で、チャン・リュル「柳川」(2021年)を観た。福岡県に柳川という場所があって、そこを舞台に映画を作ることになったので、それがきっかけで、つくられた映画…ということなのだろう。いや、そうではないのかもしれないけど、なんとなく、そういう…