2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

時間スケール

「知覚される(かもしれない)何か」が宇宙にある。それはいわば無時間を、宇宙と同じだけの大きさにおいて「存在していない」状態である。 しかしそれが、時間的幅をもつシステムとぶつかり合うと、システム(生物)の時間的拡張によって「知覚される(かもし…

ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス湖畔通り23番地

墨田区の菊川に新しくできた映画館Strangerで、シャンタル・アケルマン「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス湖畔通り23番地」(1975年)を観た。こじんまりとしているが、とても快適な映画館だった。 一人の女が、アパートの台所で料理をして…

西荻

コートを買う。納品まで一か月以上かかる。仕方ない、まあ、そんなものだ。十一月が極寒にならないことを祈る。 新宿から吉祥寺に移動して、古書店など少し見たあと、東京女子大の方向へあるいて、杉並区の善福寺公園をぐるっと回って、そのまま西荻窪まで歩…

既存論

「生きている」とはどういうことか、とか「物質」とはどういうことか、という本質談義は後回しだ。二つの領域をまたぐ発展や推移を問題にしているときは、各項を固定的に定義してしまうと身動きが取れなくなるのがオチだからである(たとえば「子ども」と「…

エコー・イン・ザ・キャニオン

Amazon Primeで、アンドリュー・スレイター「エコー・イン・ザ・キャニオン」を観た。60年代ウェスト・コースト・ロックの聖地でもあるローレルキャニオンに拠点を構え、相互に交流しつつ活動していたミュージシャンらへのインタビューと当時の曲のライブ演…

時間

本屋で、平井靖史「世界は時間でできている」を少し立ち読みしたら(以前、偽日記に引用された箇所はすべて読んではいたが)、やはりこれが冒頭から非常に面白くて、そのまま購入して今も読んでいる。まだ一章途中だが、すでに「そこをそのように解釈するか!…

汚れ

昔、ジェニファー・コネリーが蛆虫だらけの汚れたプールで溺れる映画を観たのを思い出す。あれは歌舞伎町の映画館だった。 当時の映画館や繁華街の裏手の路地には、さすがに蛆虫は見かけないにせよ相当にうす汚れていたのはたしかで、路肩にはタバコの吸い殻…

心と身

心身問題ではないけど、でも身体のコンディションが心に深く影響を与えているのは間違いない。身体の不調は心で感じ取るしかないのだが、でもその心自体が身体から影響を受けてしまうのだから判断が難しい。つまり心が受け取る身体アラートだけを信用しては…

教会

先日二人で家の近所を歩いていた。近所と言っても、あまり歩いたことのない道だったので、周囲をきょろきょろと見回しながら歩いていた。すると、自転車に乗って灰色の修道服に身を包んだおばあさんが我々の前に停まった。「そこは教会ですよ、何かあればお…

美味しい

動物が捕食したものを食べるとき、動物として「美味しい」と感じてはいるのだろう、草食動物が草を食むときだってそうだし、昆虫だってそうだろう。 「美味しい」とはつまり、過去として保管されている記憶の呼び起こしである。今まで食べたことのないような…

健康診断

明日早朝から健康診断なので、今日はお酒を飲まずに一日を終えるのだ。まったく酒を飲まない、そんな日は今夜だけのことなので、今夜はひじょうに手持無沙汰であり、せっかくの週末だというのに、何をするにも気が乗らず、仕方がないから早く寝てしまおうと…

死んでます

切られてしまった木の、切り株を見て、それが生物から物質へと変わった姿だとは、あまり思わない。木としては死んでしまっていたとしても、それはまだ生物的でもあるし、いや物質だと言われれば、そうなのかと思うかもしれないが、どちらとも言える気がする…

高校生ペア

先週のことだったか、午後の強い日差しを浴びながら歩道を歩いていると、前方からけっこうなスピードの自転車が二台並んで近づいてきて、歩道の中央を歩く我々二人を除けるため左右に分かれて、さーっと両脇を通り抜けて、変わらぬ速度のまま走り去って行っ…

上昇と下降

持続は、下方へ向かえば、その極限においては、純粋な等質性、いわば物質としての純粋な反復がある。まったく差異を生まない反復。すなわち物質。 持続が上方へ向かえば、その先には生の永遠がある。おそらく上方の先はイメージ不可能。それは下方の極限たる…

フレーム問題とゼノンのパラドックス

フレーム問題って、ゼノンのパラドックス(運動のパラドックス)問題そのものだなと思った。ウィキペディアのフレーム問題の概要に書かれていることは、ほとんど亀に追いつこうとするゼノンを思わせる。 フレーム問題https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9…

十月

家を出た直後は、もしかすると雨が降るかもと思ったのに、ほどなくして曇り空から一気に晴れ渡って、着てきた長袖シャツを脱がずにはいられなくなる。Tシャツで図書館まで歩き、建物の中に入ってからもしばらく汗が引かないほどだった。 図書館の中で、久々…

音楽の練習

土曜日の小学校の校舎から、吹奏楽部の練習する音が聴こえてくる。低、中、高音が重なり合って、ふわーっと広がるように音が大きくなり、やがて消えていく。これが立ち止まらずにはいられないほど魅惑的な音に聞こえる。管楽器の音が合わさったときの、音楽…

記憶

小石川植物園に立っているスズカケノキは、なぜネットやテレビのニュースを気にしないのかと言うと、そこで報道される内容が、自分の生存と関わらないからだ。いやいや、関わるじゃないか、戦争や災害の影響を受けたら、スズカケノキだって生きられない…とい…

映画

たとえば歩行する人を連続で撮影して、ある場所から別の場所へと移動する様子を複数枚でとらえた写真があるとする。それを重ねてパラパラとやれば、人物の歩く様子がやや細切れ状に再現される。が、ひとまずそれを一枚ずつ並べてみれば、それはある出来事、…

クローズアップ

DVDでアッバス・キアロスタミ「クローズアップ」(1990年)を観た。日本公開は1995年、たしかにその頃だった。自分のキアロスタミ初体験が本作で、渋谷の映画館で観て以来だ。当時は「とんでもなくすごい映画だ」と思った。ここに仕掛けられている事実と虚構、…

シンプルメン

ザ・シネマメンバーズで、ハル・ハートリー「シンプルメン」(1992年)を観た。冒頭から、如何にも…という感じのショットが連続するので、おお、これは楽しい・・・と思ったのだけど、しだいに退屈してしまう。これはやはり自分に固有の、1971年生まれの人間が…

琳派

「琳派」の絵そのものは、一流どころからそうでもない作品まであるとして、いずれにせよ様式性のきわめて高い、そのマニエリズム自体の面白さを観るものだと思うが、今回あらためて見ていて、この様式とはまず、モノの物理的な大小を問わずにあらわすことを…

琳派の花園 あだち

「区制90周年記念特別展 琳派の花園 あだち」という展覧会が、家から歩いて3、40分くらいの場所にある、足立区立郷土博物館でやっていたので、散歩ついでに観に行ってきたのだが、とても地味で小さな、展示作品もそれほどすごいわけではないけど、思いのほか…

ボウイ&キーチ

DVDで、ロバート・アルトマン「ボウイ&キーチ」(1974年)を観る。ちょっとうっとりさせるような、湖畔を進むボートの情景から物語が始まる。こんな優雅な脱獄があるだろうかというような。 犯罪者の脱獄、逃亡、銀行強盗、隠遁、突発的に生じる二人の恋愛関…

夜の人々

Amazon Primeでニコラス・レイ「夜の人々」(1948年)を観る。 犯罪映画。まるでドローンで撮影したかのような、主人公らを乗せた車が走っていくのを俯瞰でとらえた冒頭のシーンがカッコいい。 銀行強盗は、銀行に押し入る役割と、車で待機する役割に分かれて…

13℃

その夜の気温13℃は、とても快適だった。暗闇を歩く自分の身体が、適度に冷えた一定の質量をもつ空気の厚みを壊しながら突き抜けていく感じがする。身体の内側から生まれてくる熱は、外皮ですぐに冷却されて発汗にはいたらない。発熱と冷却のバランスが絶妙な…

就寝前

昨日と今日は、ひさびさに帰りが遅かった。家についたらすぐシャワー浴びて、簡単な食事を急いでかきこんで、それでもすでにいつもの就寝時間を過ぎてしまっているので、明日の朝はやや睡眠不足な頭で迎えることになりそうだと思う。それならそれでいいやと…

TOPICA PICTUS(2)

TOPICA PICTUSのイメージが観る者に想起させるものは多様だが、その材質がキャンバスと絵の具であるからという理由で、各作品はこの世にある様々な過去の絵画作品を思い浮かべさせる力をもつ。 一昨年ほど前からこれまで、いくつかの会場で本シリーズを見て…

TOPICA PICTUS(1)

TOPICA PICTUSでは、キャンバスの周囲に、額縁が取り付けられている。が、これは額縁と言えるのか、 各コーナーを囲うだけで、四辺が空いていたり、縁は左右だけで上下にはなかったりする。これは額縁として、その内側にあるのが絵の内容であることを示して…

ファントム・スレッド

Amazon Primeで、ポール・トーマス・アンダーソン「ファントム・スレッド」(2017年)を観る。50年代のロンドンで、貴族やお金持ちのドレスをつくるファッションデザイナーがダニエル・デイ=ルイスで、経営者の姉がレスリー・マンヴィル、その工房兼住居へ恋…