遠吠え


寒い朝。高い声で悲鳴を上げて目覚める。泣きながら身体を起こす。薄暗い空に憂鬱な思いが増す。冬になるのを嫌がる自分の中のかすかな動物的本能が騒いでつい甲高い声で喚きたくなる。ちょっと気を許すと遠吠えしたくなる。とうの昔に観念したはずなのに、それでもふとしたときに弱気が顔をのぞかせ、上半身だけ身を起こしてあたりを見回して、そのたびに鎖が地面にこすれる音がじゃらじゃらとして、そのほかは何の音もせず誰の声も気配もなく、ただ遠くの木々が木枯らしに吹かれているような気がするだけで、あらためて深い孤独を抱きしめたまま、うーーーと呻いて、その場にうずくまる。不貞腐れてそのままもう一度眠りに戻ろうとするが、お湯が沸いてヤカンの蓋がカタカタと鳴るのでもう一度すべてをあきらめてコーヒーを淹れるために立つ。目覚めてすぐにはいくら引っ張っても鎖に逆らって前足を踏ん張っている犬のように嫌がって、コーヒーが湧いて注がれた熱いものを唇につけてようやく大人しくなる。