幼稚園時代はM先生、小学一年生ではS先生だった、若い女性という存在にそれで出会った。つまり学校とは、若い女性のいる場所だった。もちろん謎の論理で校内を歩き回る壮年男性たちも、老人らもいた。なにしろ、あの男女らは少なくとも我々子供とは異なる者たちだった。

小学二年のときは、B先生で、女性だったがすでに若くはなく、おそらく母親より少し上くらいと思われる。色々なことに面倒くさそうだったが、諸事てきぱきやる感じで、それはそれで、僕は好ましく感じていた。若い女にはない持ち味だよなとさえ思った。

小学三年とときは、K先生で、容姿や物腰に関しては悪くないと当初思ったものの、ほどなくして、これははずれを引いたなと思った。色々な意味で厄介な女だった。そこそこ容易いのだけど、どこかでご機嫌を取らねばならないところはあった。そういうケアの必要な相手もいるのだと知ったのは、あの教室で僕だけではなかったはず。

思い込みが強くて、感情過多で、それを自分の長所だと思ってるふしがあった。たまに職業差別的なことを口にする人だった。

小学四年になって、W先生、僕にとって初の男性教師だった。男性の面白さをはじめて知る。そして、たまに平手で殴られた。そういうことが、当時はまだ普通だった。それをされて、これが教師に殴られるということかと思い、まるで初体験を経た気になった。面白がったり、たまに殴られたり、そういうことを繰り返した。

卒業式が終わって、教室に戻ってきたら、W先生はとつぜん男泣きをはじめた。声を上げて泣くのである。それで教室中からすすり泣きの声が上がり、僕もその場でずいぶん泣いた。悲しかったから泣いたのだが、同時にこれもまた初体験を経たという感じだった。もちろんまったく泣かない者もいた。笑顔を腕で隠しながら、周囲を見回してる者もいた。それはそれで良かった。人それぞれなのだ。