ブルー


水の中、ゴーグル越しに見える景色はブルーに染まっている。隣のコースを泳ぐ女性、肌が死体のように青白い。ぴったりとした黒い水着に包まれた細長い紡錘型の身体、壁を蹴って、潜水のままプールの底すれすれを進み、12.5メートルのラインを越えたあたりで緩やかに上昇を始める。僕が何度かターンして、しばらくしてふと前を見ると、隣にいたはずの女性が同じコースのすぐ前方にいる。姿勢を制御しながら、ゆったりと泳いでいる。壁に辿り着き、立ち姿勢となり、そのまま床を蹴ってプールから上がろうとする。青白い足が水面を境にして消えていく。足の爪一つ一つが、赤く塗られているのが見える。水中は苦しい場所、ブルーに染まっていて、こことは少し違う場所。