エリ・エリ・レマ・サバクタニ


エリ・エリ・レマ・サバクタニ 通常版 [DVD]


DVDで観た。昔なんかの映画を観にいったときに「ユリイカ(EUREKA)」の予告編をはじめて観て、画面の強度に「うわなにこれ!?すごくない?」と思ったときの、そういう映像の強い印象を、まざまざと思い出した。


北海道の地面と空だけの荒々しい風景の中を、救急車が移動していくシーンとか、映像がどれもこれも、やたらとかっこいい。黒衣装に黒日傘の宮崎あおいが立ってる姿など、ちょっとかっこ良過ぎというか、ある型にはまった世界観っぽくて、サマになり過ぎな気もしたが…。岡田茉莉子筒井康隆が対話してるのも、なんか良い感じだと思ったが…。


サウンドに関しては、全編どれも結構かっこ良く、宮崎あおいの為に浅野忠信が演奏する曲なんか、ちょっと映画「デッドマン」での、ニールヤングによる即興演奏を思わせる感じで、かなり良い。


ところで「デッドマン」のニールヤングの演奏は、デレク・ベイリーに近いニュアンスがあると思う。それは通常のギター演奏ではなく、指をこすり付け、振動させ、フレットと弦が重なり合う時の軋みだけを、マイクに拾わせるような振舞いであり、それらの音ともノイズとも言えない何かがリバーブされて、揺らぐような茫洋とした空間を作り出してる。そこに、ニールヤング独特の感傷性が一筋挟まっていて、ほどよく叙情的な印象を与える。


この映画の、浅野の演奏も最初と最期に瞑想的なコードストロークがあり、それが激しい筈の曲全体の雰囲気を、奥行きのあるものにさせている。


上記以外でも映画中では、デジタル的な印象の強い中原サウンドに対して終始ギター演奏を行う浅野だが、どの瞬間もはっとさせる音を出していて、ギタリストとしては、なかなかの腕前だ!と思った。青空をバックに逆光ぎみでギターをかき鳴らす姿なんか、鏡に映して左利きにすれば、ウッドストックのジミヘンドリクスみたい。しかし全体の、気持ちの良い微風が吹く中に機材が点在している感じは、同じジミヘンでも、むしろハワイ・マウイ島での演奏「レインボーブリッジ」の映像も彷彿とさせる。あれのジミヘンの気持ち良さそうな演奏っぷりは、ほんとうに幸福感に浸れる。Hey Babyと言う曲の、素晴らしい粘りと浮遊感…。・・・って、ここで話すべきがなぜジミヘン?なのか!っていうか自分にとってソニックユースのノイズとかって、ちょっと、あんまり。。というのがあるんだが。なぜ彼らは下向いて、なんか内気な性衝動みたいなそぶりで演奏するんでしょうね?ジミヘンの方が、かなり気持ち良さそうだ!!


別に「ノイズ」なんて殊更に言わなくても、全て音楽の漂いは、ノイズなのだ。そして、それがすごい幸福なバイブレーションを運んでくるんだ!!なんちて。どっかで聞いた様な言葉しか出てこないんだが、まあそういう事です。


音が、空気中に溶けていくことの気持ちよさ…。ヘリウムガスとしての音楽。そういうのを強く感じさせるのは、これらが野外で演奏されてるからなのか??野原に巨大なPAシステムが積まれているのは、野外フェスとかを、すぐ連想するところがあるが、ああいうのは不思議な開放感である。なんでか?ビールが飲めるから??またそのオチかよ<俺