「ゆれる」(渋谷アミューズCQN) 


(それなりにネタばれあり)
すんごい良かった。相当満足した。まあ、なんかすごい刺激的な、想像を越えるものすごいモノを観た!というほどではなくて、あくまでもすごい良く出来た、面白い映画だった。という話だが、いやでも面白かったです!


香川照之なんて、もうどの映画にも出てるじゃん食傷どころじゃねーようんざりだよ。とか言いたいところだが、素晴らしい演技に呆然となる。オダギリジョーも「アカルイミライ」以来、久々に見せたあの子どもっぽい切ない叫び声を存分に聞かせてくれて、それが嬉しい。あとどうでもいいけどオダギリさんの「7年後」の風貌が画家の山口晃に似すぎ。


この西川美和という監督にとって、田舎の頑強な社会というのは、すごいはっきりとした輪郭を持った強固な世界なのだろうか?かなりリアルさを感じさせる田舎が舞台である。田舎。というよりは、地方都市の更に郊外。といった感じか。新井浩文的な人物なんか劇中すごい魅力的(に少なくとも僕は感じる)なのだが、こういう人こそがこういう「田舎」共同体の風土を延命させ、維持するんだろうなーとも思わせる。


物語としては、「真相は何か?」という事で観る者を引っ張るのだが、その真実の裏づけである当人(の無実であれば正当な扱いをされるべきであるという思い)や、物語の語り手たる主人公の、本来疑う必要が無かった筈(の、自分の中の兄に対する思い)の確かさ自体が溶けていって、推理の根拠となる足場が崩れていって、観る人もろともゆらぐというか…こう書くと只の、普通に良く出来たミステリー映画って感じですが、でもかなり深刻で、感じさせるものが非常に重い。あと脇役が一々全部良い。蟹江敬三も良いが、木村祐一が圧倒的に(花よりもなほの百倍)素晴らしい。


真相の探求は、弁護士によって、検事によって、証人であるオダギリによって、面会室での本人の言葉によって、様々に試されるが、その度に異なる様相が現れる。この過程が素晴らしいし、細部も気が効いてるし、ドラマ性に、所々、感極まる。と同時に、単なる爽快なラストが待ってないのだろうな。という事も予想できる。(実は結構爽快なオチがあるが)


個人的な不満は、最後の8ミリ映写機〜が結末へのきっかけとなる点だろうか。ああいう古い映像が出てきて、それ観て泣いて…っていうのはなあ・・。