「骨」


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休日だというのに、避けがたい状況が起こり日中かなり仕事をする事になった。その仕事の合間に、数日前に届いたペドロ・コスタDVDボックスを開封。電話が鳴らない事を祈りつつ観始めた。で、さっきこの文章を書くために気になるところとかをもう一度見直そうとして再度再生したら、ついそのまま最初からもう一回観てしまった。最初の方が強い印象だったけど、二回目の方がかなりがっちりと細部まで楽しめた。


楽しめた??…そう、その言葉にある種の躊躇を感じるのがこの映画だ。というか映画っていうのは、やっぱり、圧倒的に「喜び」の具現化なのだと思う。そこにある光と影のありさまをカメラで撮影した結果がつなぎ合わされるだけで、もうどうしようもなく「喜び」であるようなものが映画であろう。本作における、日中の、特にクロティルデが家政婦として働いている家の中に差し込んでくる光とか、雑踏や行き交う人々を照らす真昼の外光とかの、言葉を失うほどの美しさだとか、貧しい貧民街の壁やドアや路上のゴミなど一つ一つが怖ろしいまでにきらきらと輝いていて圧倒される。


とはいえ、その美しさに酔うだけで満足する事をまるで許してくれないのがこの映画で、はじまってから終わるまで、僕はとにかくひたすら、あれらの登場人物たちの、ほとんどとても静かに動き回る草食動物みたいな行動とか一挙手一投足とかを眺めているしかない。…よくわからないけど、僕はとにかく「貧困」というのが怖いのだ。僕は「貧困ではない状況」を事前に整える事ではじめて何とかもっともらしく稼働できるような、元々かなり性能の低い人間であるという自覚がかなり昔からある。。…もう遅いので今日はここまで…