MOVIX亀有で「リンカーン」を観る。19世紀のアメリカの感じ。見応えのある画面がたくさんあって満足した。ダニエル・デイ=ルイスリンカーンにも見えるし、ダニエル・デイ=ルイスその本人にも見える。とくに声は、もろにダニエル・デイ=ルイス。当たり前だけど。見た目はしかし、リンカーンってこうだったのでは、とも思わせる。痩身で、やや猫背気味に座っている姿とか、ゆったりと立ち上がる姿は、やはりほーっと見惚れるようなものがある。国務長官役のデヴィッド・ストラザーンも良かった。トミー・リー・ジョーンズはどうしてもテレビCMで見慣れすぎているので、なんかダメだ。


とりあえず話の中心は、南北戦争末期において、奴隷制にまつわる憲法の改正案が下院にて可決されるか否かを巡るものである。いわば憲法改正への困難に立ち向かうスリルと緊張感である。この映画の中でのリンカーンはたぶん、個人として、人間の平等や自由についての理念を信じる存在として(かなり「立派」な「いい人」として)描かれていて、そのうえで、奴隷制法案改正のために、複雑怪奇な政治的情況において、さまざまな駆け引きや説得、策謀などを駆使して、どうにか危うい綱渡りをわたろうと頑張るのだが、しかしこれは「きれいごとを言うけど、結局生臭い駆け引きで物事は決まる。」というような単純な話ではなくて、むしろきれいごとも汚らしさも平気で共存してしまうような、今のこの場において、次の一手を可能にするために何が可能で、如何なる方法がありうるのか?ということについて、それこそ、きれいごとじゃなく、足掻くように探るということを、正面から泥臭く描こうとしているように感じられる。


…ところで、書き忘れていたが、一昨日(金曜日)は日中、小石川植物園に行ったのだった。この植物園はたいへん良かった。あまり時間がなくて、結局敷地内の半分しか見ることができなかったのだが、如何にも学術的に利用されている植物園の感じで、どの植物も植生されたものたち特有の佇まいが感じられる。シダ園および公開温室内の熱帯植物等を中心にみた。幹の太さにいったい樹齢何年なのかと驚くような樹木がいっぱいある。ハンカチノキも今ちょうど咲いている時期だったようで、ちり紙のような白い花(葉)が陽の光を浴びながらいくつもひらひらとしていた。